田舎姫

□第二話
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「ねぇ、例の転校生、見に行こうよ!」

昼休み、弁当を食べ終えると、マキちゃんに誘われた。マキちゃんは意外と面食いなところがある。

「うーん、ごめん。私はいい、かな。」

けれど、私は反対にあまりそういう人に関心を持ったりしないので、謝って断る。

「えー、勿体ないなぁ。」

すると、マキちゃんは残念そうにするけれど、その後一人で見に行ってしまった。

「いけない、本返さなきゃ・・・。」

一方、私はこの前借りた四冊の本が今日返却日だったことを思い出し、急いで図書館に向かった。

けれど、よそ見していた所為で廊下の曲がり角で誰かと 出会い頭にぶつかってしまった。

「きゃあ!?」

私はその衝撃で思わず後ろに尻餅をついた。抱えていた本をバサバサと落としてしまった。

「ご、ごめんなさい!」

「すまぬ、不注意が故にぶつかってしまった。」

慌てて謝ると、上から低い声が降ってきた。

ふと顔を上げると、私は目を見開いた。
何故なら、そこには見慣れない美青年が立っていたからだ。

この時、私の心がトクンと揺れ動いた。




「あの、本当にすいませんでした。」

私はあの後もう一度謝った。ぶつかってしまったのに、落ちた本まで拾ってもらって、本当に申し訳なかった。

「いや、俺もよそ見していた。すまなかった。」

すると、青年は律儀に頭を下げて謝った。私は慌てて手を横に振った。

「あ、頭を上げて下さい!でも、怪我がなくて良かったです。」

すると、彼は急に笑った。

「それは俺の台詞だろう。あんたの方が明らかにダメージを受けている。」

「あ・・・。」

そう言えばそうだった。
と、恥ずかしくなって顔を赤くした時、丁度予鈴が鳴った。

「あっ、本返さなきゃ!あの、本当にすいませんでした!あと、ありがとうございました!」

「あぁ、気を付けろよ。」

そして、私たちは別れた。



五限の授業が終わると、マキちゃんがとても残念そうな表情で私のもとにやってきた。

「転校生、いなかった〜。」

「・・・私、会ったかも。」

けれど、私がそう言うと予想通りマキちゃんは食い付いてきた。

「えぇ!?転校生に会ったの!?」

「うん、多分。学校では見かけない人だったから。」

すると、他の周りの女の子も集まってきた。

「どんな人だった?」

「やっぱり格好良かった?」

皆は本当に興味津々。

実際、あの青年は背が高く、目付きが鋭く、とてもクールだった。
でも、それでも優しいところもあって、本当に皆の理想通りだったと思う。

けれど、私は一言









「蒼が似合う人だった。」

と答えた。






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