田舎姫

□第三話
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「今日、私部活だから。」

「分かった。」

今日はマキちゃんは部活の日。バレーボール部に所属している。
でも、私はいつも言われる前から分かってる。だってマキちゃん、いつも以上に目が生き生きしてるから。

そんなわけで、今日は一人で帰る。別に、寂しい訳じゃない。大好きな町を一人でゆっくり歩くのも大好きだから。

「・・・あ。」

でも、帰ろうとした時、私は下駄箱に昼休みにぶつかった青年がいることに気付いた。
彼は少し困ったような顔をしている。よくよく見ると、彼は携帯電話を耳にあてていた。

「あ、あの!」

きっと転校してきたばかりで分からないのだろう。勇気を持って彼に話しかけた。

「携帯は繋がりませんよ。ここ、山に囲まれているから。」

「そう、なのか。道理で電話が繋がらないと思った。」

「あの、学校の公衆電話、案内します。」

公衆電話は二階の職員室前にある。私はそこまで彼を案内した。

「すまない、助かった。少し、待っててくれないか?」

「えっ、は、はい!」

案内したら、それで終わり。少し残念だが、帰ろうとすると、呼び止められたので、待つことにする。
私は呼び止められるとは思っていなかったので、びっくりした。

「もしもし、母さん?あぁ・・・身体は・・・そうか。・・・いい、それは俺がする。ではな。」

彼が受話器を置き、カードを取り出すと、私の方を見た。その鋭くクールな目に私はドキッとした。

「すまぬ、俺はおととい引っ越してきたばかりで、まだこの町が分からぬ。だから、その・・・」

けれど、クールだと思っていたら、急に口をまごつかせ、白い頬はほんのりと赤くなる。

「え・・・?」

それを見て、私も思わず顔を赤くしした。でも、しばらくすると彼は意を決したように言った。

「も、もし、迷惑でなければ、町を簡単に案内してほしい・・・。俺は買い物をしたいのだが、場所すら分からぬ。」

一瞬、彼の言ったことが分からなかった。
私が、町を、案内?
しかも、目の前の彼に・・・?

「やはり、迷惑だろうか・・・?」

「い、いえ!よ、喜んで案内させて頂きます!」

私はやっとのことで話の内容を理解し、慌てて返事をした。

という訳で、予定変更。
私は彼に町案内することになった。

今日はついてるのかな?






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