田舎姫

□第六話
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「へぇー、そんなことが?」

「ロマンチック〜。」

私が昨日のことを話すと、皆はそれぞれ感想を洩らした。
マキちゃんは昨日部活に参加したことをまだ後悔している。

「あー、部活に出るんじゃなかったー!」

「マキちゃん、あなた一応未来のエースでしょ?」

そんなことを言ってはいけません、と私は言った。

「でも、いいなぁー。今日も偶然会ったんでしょ?」

「しかも、先輩の方から声をかけてもらっちゃうとか・・・。」

『はぁ〜。』

それから、周りの女の子は皆切なげにため息を吐いた。
いや、ため息吐きたいのはこっちだって。




放課後。
今日もマキちゃんは部活で、私は一人だった。昨日と違い、今日のマキちゃんは何やらぶつぶつ言っていておかしかったけど。



帰り道。私は一人でのんびりと道を辿る。けれど、途中でとても疲れた様子で買い物袋を両手に歩いている女の人を見つけた。思わず駆け寄った。

「あの、迷惑でなければ、お荷物、家まで運びますよ。」

「え?」

声をかけると、女の人はこちらに振り向いた。見た目は四十代後半くらいで、少し皺があるが、とても優しそうな顔立ちをしていた。

「いいえ、大丈夫よ。気持ちはありがたいけれど、あなたも忙しいでしょう?」

「いえ、むしろ暇で仕方ないくらいなので大丈夫です。あの、手伝わせて頂けませんか?私、人の役に立ちたいんです。」

私は困っている人がいたら、どうしても放っておけない性格なので、女の人は遠慮しているが諦めずに食い下がった。

「本当に?ごめんなさいね、気を遣わせてしまって。」

「いいえ、気にしないで下さい。」

すると、女の人は諦めたようで、私は早速二つの買い物袋を受け取った。

「本当にありがとうね。・・・私、少し病気を患っていてね。でも、今日は調子が良かったから、買い物に行ってみたんだけど、やっぱり流石に疲れちゃって。
あなたみたいな人が現れてくれて、正直助かったわ。」

「そう、だったんですか・・・。なら、一層お役に立てて嬉しいです。」

私がそう言って微笑むと、女の人は少し目を見開き、けれど、すぐに笑顔になった。

「あなた、素敵なお嬢さんね。将来は良いお嫁さんになれるわ。」

「い、いえっ、そんな素敵だなんて・・・!」

急にそんなことを言われ、私は慌てて否定した。でも、褒められて嬉しくて、半分は照れだった。

「そういえば、その制服は風浜高校さんね?
私の息子も通っているのよ。」

「へぇ、そうなんですか?その人は――「母さん!!」

その時、私の声が誰かの叫び声で遮られた。しかも、その声にはとても聞き覚えがあり、まさかと思った。





そのまさかだった。

私たち二人の前には、息を切らせた斎藤先輩が立っていた。






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