田舎姫
□第八話
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「あ、琴音だ。おはよー。」
「おはよう、マキちゃん。」
朝、いつも通り登校すると、教室ではマキちゃんや他のクラスメートの女の子が固まって話していた。
「あ、琴音じゃん。今日どうする?」
「え、どうするって?」
私が皆と交じろうとすると、友達の一人であるミクちゃんが話しかけてきた。
私は話の内容が分からなくて聞き返すと、もう一人のユミちゃんが驚いた顔をした。
「ちょっと、忘れたの!?今日は調理実習じゃん!てことは、誰かにあげるっていう一大イベントがあるじゃん!」
「そっか、今日は調理実習か。」
話すうちに段々エスカレートしていくユミちゃん。それを軽くあしらったのはカナちゃんだった。
「あー、はいはい。てか、ユミうっさい。・・・で、琴音は誰にあげるか決めた?」
「うーん、まだ――「う、宇奈月さん!」
分からない、と言おうとしたところで、クラスメートの女の子に呼ばれた。その子は何故か顔を赤くして慌てた様子だった。
「あの、何か先輩らしき人が呼んでるよっ!」
「先輩?皆、ちょっと待ってて。」
誰だろう?そう思いながら話を中断して廊下に出ると、私は思わず声を漏らした。
「あ、斎藤先輩!おはようございます。」
「あ、あぁ。おはよう。」
廊下には斎藤先輩が立っていた。けれど、その表情には何故か戸惑いのようなものも混ざっている。
「どうかなさったんですか?」
「い、いや・・・その、今日の放課後は何か予定は入っているか?」
「いえ、放課後は空いていますよ。」
そう答えると、先輩は安堵の表情を浮かべた。
「そ、そうか。ならば、その・・・い、一緒に、その・・・」
「?」
けれど、先輩はその先をなかなか言おうとしない。しかも先輩の顔を見ると、それは耳まで真っ赤に染まっていた。
私は具合でも悪いのでは、と心配になった。
「せ、先輩・・・。」
「な、ななっ、何だ?」
「その、具合が悪いのであれば、無理しないでください。今すぐに伝えることでなければ、後で私から先輩の教室に――「ち、違う!!」
けれど、先輩は私が言おうとしたことをすぐさま否定した。その声がとても大きくて私は驚いた。
「あ、いや、すまない・・・。その、何もないのであれば、一緒に帰らないか?」
「え、あっ、はい。大丈夫ですよ。」
「・・・・。」
「・・・・。」
そして、先輩がやっとのことで発した言葉に私が二つ返事すると、今後は沈黙が流れた。
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