田舎姫

□第十三話
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「うわぁ、すごい!」

約束の土曜日。私は総司さんと一緒に東京の中心部に来ていた。
初めて生で見る迫力ある景色に私は圧倒された。


それから、私たちは近くのファミレスで少し遅めの昼食をとった。のだけれど・・・

「そ、総司さん。」

「ん?」

「総司さんは食べないんですか?」

「食べるよ。」

総司さんはそう言っているが、先ほどから自分のものには全く手をつけず、私の方ばかりを見ている。そんなに見られると、こちらも恥ずかしくて食べられない。

「えと、さっきから何故私ばかり見ているんですか?」

「ん?それは、琴音ちゃんが可愛いからだよ。」

「も、もうっ!真面目に答えて下さい!」

「えー、僕はとても真面目に答えてるよ?」

「そんなこと言っても駄目です!先輩も食べて下さいよ!」

仕舞には総司さんが食べるまで私も食べない、と言って少し強引に総司さんに食べるよう促した。
そこでやっと食べてくれたけど、これだけでも随分と体力を消費してしまった気がする。


けれど、昼食の後は本当に驚きの連続だった。

デパートや、大型のショッピングセンター、ゲームセンターなど、沢山の店に入ったが、どれも規模が桁違いだった。

「東京って、すごいですね・・・。」

「琴音ちゃん、さっきからそれしか言ってないよ。」

今日何度目かの呟きに総司さんは笑ったが、本当にすごいものはすごいのだから私はまたしても呟いてしまう。

――と、そんな時

「あれぇ、総司じゃん!」

「超偶然〜!」

私たちの前に、二人の女の人が現れた。両方とも化粧をしていて、制服のスカートもとても短く、とにかく派手だった。私はそんな二人が怖いと思ってしまった。

不安になって、総司さんを見ると、先ほどとは一変してとても冷たい表情で彼女たちに視線を向けている。

「何?僕忙しいんだけど。」

「何それ、冷たー。」

「同じクラスでしょ?話し掛けたっていいじゃん。」

総司さんのいつもより低い声に二人は不満げに話す。そんな中、初めて彼女たちの視線が私をとらえた。
私はビクッとした。

「え、その子誰?」

「あまり見ないでよ。怖がっちゃうでしょ。」

総司さんは私を庇うようにして言ったが、彼女たちは構わず次々と言葉を口にする。

「てか、制服ダサくない?膝丈とか超ダサ!」

「髪も三つ編みだし、格好が全体的にやばいくね?てか、マジで時代遅れ。」

「つーか、あんたさ、そんな格好で総司の隣歩いてんなよ。超目障りなんだけど。」

「もはや出直してこいって感じ?あははっ!」

「・・・・っ!」

なんて、二人は私を見て好き勝手に言いたい放題言っている。
分かっていたことだったけど、やっぱり直接言われると結構きついものがあった。

その時、総司さんが二人を睨みつけて言った。

「ねぇ、いい加減にしてくれる?これ以上何か言ったら、タダじゃおかないよ。」

「えぇ?だってうちらは本当のことを――「目障りだよ。さっさと失せなよ。」

最後に総司さんがそう冷たく言い放つと、二人は怖じけづいたようで、すぐに去っていった。
まるで、嵐が去ったようだった。

私が何も言えないでいると、総司さんは申し訳なさそうに私を見た。

「琴音ちゃん、ごめん。大丈夫だった?」

「はい、大丈夫です。少し、びっくりしましたけど・・・。」

とは言ったものの、私の頭の中では先ほどの二人の女の人の言葉が離れずにいた。

「ちょっと疲れちゃったかな?」

「・・・はい、正直に言いますと少し。」

「うん、そうだよね。」

すると、総司さんは『じゃあ』と言って私の左手を引いて歩き出した。

「そ、総司さん?」

「君と離ればなれにならないように、ね。しっかり握ってて。」

私は慌てたけれど、総司さんのとても優しい表情に何もできなくなってしまった。総司さんの右手はとても大きく、私の小さな左手をすっぽりと包みこんだ。それがすごく温かくて、私は少し心を落ち着かせることができた。

総司さんに黙ってついていってから五分もしないうちに、一件のマンションが見えてきた。

「ここが僕の家なんだ。」

総司さんはそう言いながらそのマンションに入り、五階の五○五というというところで立ち止まった。
そして、鍵を開けると中へ入るように私を促した。

「あの、いいんですか?」

「うん、どうぞ。」

その言葉を合図に私は家の中にお邪魔した。中に入ると、すぐに総司さんの香りがした。






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