田舎姫
□+α
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「琴音ぇぇぇ!!あんた、浮気したって本当!?」
「は、はい!?」
「てめぇは、黙ってろぉぉぉ!!」
文化祭一日目が終了し、私は総司さんと別れて自教室に戻ると、いきなりユミちゃんが猛ダッシュで迫ってきたところをカナちゃんが思い切り蹴り跳ばした。
一体、何が?
「いやね、沖田さんとあんたのことを話していたところなの。」
ミクちゃんが混乱している私に説明すると、マキちゃんが急に叫び出した。
「私、最初マジでびっくりしたんだからね!
超美形があんたを泣かせて困ってるんだもん!
あー!私ってば超偉っ!
叫びそうだった自分に喝を入れて冷静を装ったのマジ偉っ!」
「マキ、あんたも落ち着いて。」
「これが落ち着いてられますか!!」
「おめーは黙ってろっつってんでしょ!」
「あだっ!」
段々ヒートアップするマキちゃんをカナちゃんが抑えようとするが、再びユミちゃんが叫び出すと今度は頭部を思い切り叩いた。
「それにしても、琴音の周りには妙に美形が集まるわね。」
「斎藤先輩に沖田さん・・・あぁ、どちらも捨て難い。」
「お二方を物みたいに言うな。でも、確かにどちらも全く劣らず超イケメンよね。」
ミクちゃん、ユミちゃん、カナちゃんがそれぞれ口にした後、マキちゃんを含めて全員の視線が一斉に私に向けられた。
『で、あんたはどっちにするつもり?』
「はい?」
一気に詰め寄られて危機感を覚えたけど、言葉の意味が分からない。
「だから、どっちが好きなの?斎藤先輩?それとも沖田さん?」
「いや、どっちって・・・お二人ともすごく良い先輩だから好きだよ?」
「だから、そういう意味じゃないのよぉぉぉ!!」
「わっ!?」
ミクちゃんの問いに私が答えると、またしてもユミちゃんが叫びながら、今度こそ目の前まで迫ってきて私の両肩を掴んだ。
「いい?そんなんじゃ、先輩たちがかわいそう!そういう答えが一番困るのよ!」
「えぇ?」
「どっちつかずのままは絶対に駄目!ちゃんと決めなくちゃ、どっちもつらいだけだよ!」
「今回ばかりは、私も同意見よ。」
すると、カナちゃんが珍しくもユミちゃんの言うことに頷いた。
というか、本当に珍しい。今日は雪が降るのでは?
「琴音、あんたそろそろ気付いたら?自分の気持ちに。
確かに、あんたは超鈍感だけど、今まで先輩たちと過ごしていて、少しは気持ちの変化があったはずよ。」
「自分の気持ち?」
「そうそう、あんたは自分の気持ちをスルーし過ぎなんだよ。
少しくらい、疑問に思ったこともあるでしょ?」
・・・確かに、ミクちゃんの言うとおり、はじめ先輩とか総司さんと一緒にいた時、異様に心臓がドキドキしたりして何だろう、と思ったことが何度かあった。
「まぁ、今はまだ分からないかもしれないけど、これからは少し意識してみなよ。そうしたら自分の気持ちに気付くよ、きっと。」
「う、うん。
でも、皆何でそんなに必死なの?」
マキちゃんの言うことに私は頷く。けれど、先ほどから何故皆はこんなに必死に私に言ってくれるんだろう、という疑問もあって皆に言ってみた。
すると、全員が同時に同じことを言った。
『そんなの、決まってるじゃない。先輩お二方があまりにもかわいそうだからよ。』
私、先輩たちにそんなに悪いことしちゃったのかな?
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