田舎姫

□第二十話
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風浜高校の文化祭が終わってから一週間が経過した。

放課後、いつも通り私ははじめ先輩と帰っていた。
その時、先輩がふと口を開いた。

「琴音、その・・・今週の土曜日の放課後は空いているか?」

「今週の土曜ですか?はい、空いてますけど・・・。」

「今週の土日に桜華の文化祭がある。俺はどちらとも行くが、土曜は部活の試合もないし、基本は自由行動だ。
だから土曜の放課後、あんたも一緒にどうかと思ったのだが・・・。」

桜華学園・・・確か、はじめ先輩の前の学校で、総司さんやこの前知り合った平助君、千鶴ちゃんがいる所だ。

よく考えたら、桜華学園の知り合いがそこそこいるではないか。
それに、先輩が前に通っていた学校も見てみたいと思った。

「はい、私も行ってみたいです。」

だから、私はすぐに頷いて返答した。






―沖田side―

「うーん、琴音ちゃん出ないなぁ。」

僕は今、琴音ちゃんに電話をしている。

何故かって?
そんなの、決まってるじゃない。今週末の文化祭に誘う為だよ。

誘うのは土曜。日曜は他校との試合とかで忙しいけど、土曜は午後は丸々空いている。

それに、琴音ちゃんの側には厄介なはじめ君がいるし、早めに誘っておかないと。

今日は運良く部活が早く終わったし、五時過ぎならきっと琴音ちゃんは家にいると思って電話したんだけど、まだ帰っていないのかな?

そう思った時、カチャッと電話が繋がった。

『遅くなってすいません、宇奈月ですけど・・・』

「あ、琴音ちゃん?」

すると、彼女の高くて可愛いらしい声が聞こえて、僕は思わずニヤけた。

『あ、総司さんですか?』

「うん、そうだよ。」

琴音ちゃんもすぐに僕だと分かってくれて、更に嬉しくなる。

『こんにちは、総司さん。
すいません、自分の部屋にいたので、気付くのが遅くなってしまいました。』

「こんにちは。ううん、大丈夫だよ。
それより、今大丈夫?」

『あっ、えーっと・・・はい、大丈夫です。』

今の間が気になったけど、まぁいいや。

「あのさ、今週末にこっちの文化祭があるんだけど、土曜は琴音ちゃんの予定は空いてる?」

そう言うと、琴音ちゃんからは『丁度良かった!』という声が。


・・・なんか、嫌な予感がするんだけど。


でも、そういう嫌な予感はいつも当たってしまうわけで・・・



『今日、はじめ先輩にも誘われたんです。だから、土曜日に一緒に行く予定なんですよ。』



・・・やっぱり。

今度から、誘う時はもう少し早めに言うようにしよう。

『総司さん?』

「いや、何でもないよ。大丈夫。」

僕が黙ってしまったことを不思議に思った彼女にすぐに言葉を返し、『それより』と話を続けようとした時だった。

琴音ちゃんの受話器越しの声が急に遠ざかった。

『えっ・・・あ、・・・・・ですか?』

「琴音ちゃん?」

僕は不思議に思って声をかけるけど、返事はない。
よくよく耳を凝らしてみると、琴音ちゃんは誰かと喋っているみたいだ。
お母さんかな、と一瞬思ったけど、だとしたら僕の電話にはすぐにお母さんが出たはず。

じゃあ、一体誰なんだろう?

色々と思考を巡らせているうちに会話が終わったらしく、話し声が聞こえなくなった。

「琴音ちゃん?」

それから再び受話器越しに近い気配を感じ、僕はそれを琴音ちゃんだと思い込んで声をかけた。

でも、次に聞こえてきた声に僕は思わず目を見開いた。





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