田舎姫

□第二十一話
1ページ/3ページ




「うわぁ、広い・・・!」

約束の土曜日。

私ははじめ先輩に連れられて、桜華学園に来た。

そして、着いた時の私の第一声がそれ。

風浜高校とは比べ物にならないくらい広い。というか、とにかく何から何まで凄かった。

「そんなに凄いか?」

「はい、もう圧倒されてしまいます。」

「そうか。・・・行くぞ、琴音。」

はじめ先輩はそんな私にふと微笑むと、私の手を引いて歩き出した。






けれど、わくわくな気持ちも、学園内に入ってしばらくするとなくなってしまった。

何故かって、とにかく周りの視線が物凄く痛かったからだ。
視線といっても、ほとんどが桜華学園の女子生徒で、ふと視線を合わせると、ギロリと睨まれた。

私は怖くて、周りを見ることができなくなって、俯きながら歩いた。

どうしてこんなに見られているのだろう。
もしかして、今の自分の格好が浮いているからだろうか。

だって、こんな綺麗な学園の中にこんな田舎じみたセーラー服と三つ編みだし、それにこの前東京に行った時もそうだったから・・・。

そう思っていた時、急にはじめ先輩が立ち止まって私の方を見た。

「琴音、大丈夫か?」

「え?」

「顔色が悪い。具合悪いのか?」

先輩は私の様子に気付いたみたいで、心配そうに私を見ていた。
はじめ先輩は優しいから、すぐにそう言って心配してくれる。

でも、折角先輩の前の学校に来たんだし、先輩も楽しみに違いない。

「いえ、大丈夫です。」

「そうか。だが、決して無理はするな。
少しでも具合が悪いと思ったら俺に言って欲しい。」

「はい、ありがとうございます。」

そんな先輩に迷惑をかけたくなくて、私は首を横に振って否定した。

すると、はじめ先輩はそう言ってくれたけれど、きっと言うことはないだろう。

桜華学園に来るのは今日限り。だから、視線なんて慣れてしまえば、きっと平気だから。






「まずは昼食をとろう。校内のカフェテリアでいいか?」

「はい。」

ということで、私たちはカフェテリアに行くことになった。

けれど、校舎と校舎の間を移動している時、横から声がかかった。

「琴音ちゃん!」

見ると、総司さんが袴姿でこちらに駆け寄ってきた。

「総司さん、こんにちは。」

「こんにちは。なに、これから昼食?」

「あ、はい。」

「じゃあ、僕も一緒にいい?いいよね、はじめ君?」

「あ、あぁ・・・。」

はじめ先輩に許可を求める為に総司さんが私から視線を外した時、私は思わず総司さんの格好を凝視した。

それにしても、総司さんの袴姿はいつも以上に増して格好良い。
部活が終わったばかりなのか、首辺りには薄らと汗が見えて、そこが更に格好良く見えた。

きっと、部活中の総司さんはもっと格好良いんだろうなぁ・・・。

そう思っていると、いつの間にか総司さんが私の方を見ていた。






.
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ