田舎姫
□第二十一話
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「うわぁ、広い・・・!」
約束の土曜日。
私ははじめ先輩に連れられて、桜華学園に来た。
そして、着いた時の私の第一声がそれ。
風浜高校とは比べ物にならないくらい広い。というか、とにかく何から何まで凄かった。
「そんなに凄いか?」
「はい、もう圧倒されてしまいます。」
「そうか。・・・行くぞ、琴音。」
はじめ先輩はそんな私にふと微笑むと、私の手を引いて歩き出した。
けれど、わくわくな気持ちも、学園内に入ってしばらくするとなくなってしまった。
何故かって、とにかく周りの視線が物凄く痛かったからだ。
視線といっても、ほとんどが桜華学園の女子生徒で、ふと視線を合わせると、ギロリと睨まれた。
私は怖くて、周りを見ることができなくなって、俯きながら歩いた。
どうしてこんなに見られているのだろう。
もしかして、今の自分の格好が浮いているからだろうか。
だって、こんな綺麗な学園の中にこんな田舎じみたセーラー服と三つ編みだし、それにこの前東京に行った時もそうだったから・・・。
そう思っていた時、急にはじめ先輩が立ち止まって私の方を見た。
「琴音、大丈夫か?」
「え?」
「顔色が悪い。具合悪いのか?」
先輩は私の様子に気付いたみたいで、心配そうに私を見ていた。
はじめ先輩は優しいから、すぐにそう言って心配してくれる。
でも、折角先輩の前の学校に来たんだし、先輩も楽しみに違いない。
「いえ、大丈夫です。」
「そうか。だが、決して無理はするな。
少しでも具合が悪いと思ったら俺に言って欲しい。」
「はい、ありがとうございます。」
そんな先輩に迷惑をかけたくなくて、私は首を横に振って否定した。
すると、はじめ先輩はそう言ってくれたけれど、きっと言うことはないだろう。
桜華学園に来るのは今日限り。だから、視線なんて慣れてしまえば、きっと平気だから。
「まずは昼食をとろう。校内のカフェテリアでいいか?」
「はい。」
ということで、私たちはカフェテリアに行くことになった。
けれど、校舎と校舎の間を移動している時、横から声がかかった。
「琴音ちゃん!」
見ると、総司さんが袴姿でこちらに駆け寄ってきた。
「総司さん、こんにちは。」
「こんにちは。なに、これから昼食?」
「あ、はい。」
「じゃあ、僕も一緒にいい?いいよね、はじめ君?」
「あ、あぁ・・・。」
はじめ先輩に許可を求める為に総司さんが私から視線を外した時、私は思わず総司さんの格好を凝視した。
それにしても、総司さんの袴姿はいつも以上に増して格好良い。
部活が終わったばかりなのか、首辺りには薄らと汗が見えて、そこが更に格好良く見えた。
きっと、部活中の総司さんはもっと格好良いんだろうなぁ・・・。
そう思っていると、いつの間にか総司さんが私の方を見ていた。
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