人間になりたい猫

□青い人
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「さつきちゃん、おはよう!」



転校してから数日経ち、私はさつきちゃんについて沢山のことを知った。



例えば、彼女は男子バスケ部のマネージャーであること。



帝光中学校の男子バスケ部はかなり強豪らしく、1軍から3軍まであるらしい。



そんな大人数の部員たちのお世話係ということで、彼女にはとても感心するところがある。



「あ、成琉ちゃん、おはよう!」



「今日も朝練だったの?」



「うん、そうだよ。」



そんなわけだから、毎朝早くから練習があるみたいで、私はいつものように『お疲れ様!』と彼女に言った。



その時――――



「おい、さつき!国語の教科書持ってねぇ?」



教室にバタバタと一人の男子生徒が入ってきて、さつきちゃんのもとにやってきた。



「あ、青峰君!もー、また忘れたの!?」



「わりーわりー!」



『青峰』と呼ばれた彼は、頭をかきつつさつきちゃんに謝る。とても反省してるようには見えないけど。



――それにしても、黒いな、彼。



青い髪も目立つけれど、それ以上に彼の肌の黒さは一段と目立つ。



おまけに、とても長身で外見だけを見るととても怖そうな感じだ。



「あ、でも私のクラス今日国語ないから、持ってないや。」



「「えっ、そうなの(か)!?」」



「え、何で成琉ちゃんまで・・・?」



今のさつきちゃんの言葉に思わず私も青峰君と同じ反応をしてしまった。



「あ、うん。今日てっきり国語があると勘違いしてた。」



昨日しっかりと時間割を見て準備したはずなのに、見間違えてしまったようだ。



「だから、貸すよ。はい。」



まぁ、ここで彼に貸せば持ってきた意味もあるもの。



そう思って彼に教科書を差し出すと、彼は目を見開いた。



「おま、胸で―――むごっ!?」



「ちょっ、青峰君、初対面でいきなりそういうこと言わないの!!」



そして、彼が何かを言いかけた時、咄嗟にさつきちゃんがその口を手で塞いだ。



「え、胸がどうしたの?」



「な、何でもないの!気にしないで!」



「もがっ・・・ぶはっ!!さつき、てめぇ何しやがる!?」



いきなり口を塞がれて若干キレ気味の彼は、それからさつきちゃんとの口論になった。



私はその中に入ることもできないので、しばらく様子を見ていた。



けれど、もうすぐでホームルームが始まりそうになり、私はそっと彼に声をかけた。



「あの、教科書いいの?」



「おっと、マジでサンキューな!後で返すから!」



「あ、ちょっ、青峰君!」



すると、彼は教科書を素早く受け取った後、またバタバタと教室を出て行った。



まるで、嵐が去ったようだった。



「成琉ちゃん、なんかごめんね。」



「いいのいいの。困ったときはお互い様ってね。」



さつきちゃんはとても申し訳なさそうにしていたけど、実際全く気にならない。



やっぱり、今までカカ族として色々と助け合って生きてきたからだと思う。









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