人間になりたい猫
□紫の人
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「え、何これ、『まいう輪』?」
連休3日目。
私は学校に行く前に、近くのコンビニに寄っていた。
お昼のお弁当を買うためだ。
けれど、その時ふと目についた『まいう輪』というお菓子。
以前、1本10円の『まいう棒』というのを食べたことがある(あれは本当に美味しかった)けれど、それが輪っかの形で袋菓子になったのは初めて見た。
しかも、1袋100円しないから、とても安い。
結局、興味と安さで買ってしまった。
家に帰ったら食べよう。
時間はあっという間に過ぎて、お昼休憩の時間になった。
さつきちゃんと食べるために、一度お弁当を取りに行こうとした、その時―――
「ねーねー、一条ちんだっけ?
なんか、お菓子もってないー?」
後ろから、というより上から誰かの声がして、振り向くと、思わず私は驚いた。
なんと、そこには見上げるほど背の高い青年が立っていた。
おまけに、がたいもガッチリとしていて、とても迫力があった。
「あの、私苗字呼びに慣れてないので、名前で呼んでいただけませんか?」
「んー?じゃあ、成琉ちん。
というか、2年でしょ?俺もそうだから、丁寧に話さなくていいよー。」
なんと、この人も同い年だったとは。
というか、この人と同い年というのが一番の驚きだった。
正直、すごい身長差のために、すごく見下されている感じがして、結構怖い。
それで、彼が聞いてきたことは何だったか。
そう、お菓子だ。・・・・え、お菓子?
―――その図体で、『お菓子』ですか・・・?
「えっと、お菓子だっけ・・・?」
「あー、うん。
持ってたの全部食べちゃったから、成琉ちんは持ってないかなーって。」
一応もう一度聞いてみたが、聞き間違いではなかったようだ。
それにしても、今気づいたけれど、外見に比べて中身は結構幼い気がする。
それに、なんだか話し方がフワフワしている。
というか、『ちん』って、なんか黄瀬君に似てるな。
「お菓子か・・・・あっ、そうだ。」
何か持ってたか考えようとした時、朝のことを思い出した。
「ちょっと待ってて。」
私は、鞄からお弁当と、今朝買ったスナック菓子を取り出して、彼のもとに戻った。
「はい、どうぞ。」
「え、何これ・・・?」
彼にお菓子を渡すと、彼はまるでそれを初めて見るかのように、手に取ってじーっと見つめた。
まぁ、そうだろう。
なんせ、『まいう輪』は新作で、発売されたばっかりだ。
「『まいう輪』だよ。
まいう棒は知ってる?それの輪っかバージョンなんだって。
新作だよ。今日たまたま見つけたの。」
すると、彼は急に目を輝かせた。
「わー、新作だー!」
それは、本当に小さな子どもの、無邪気な笑顔と何ら変わりはなかった。
―――何この人、超可愛いんですけど。
「成琉ちん、ありがとー!」
そう言って、早速袋を開けて食べ始める彼。
内と外のギャップがすごくて、びっくりだったけれど、慣れるととても癒し系だった。
でも、それよりも彼の姿はアノ子の姿と重なって見えて――――
「ぷっ、アハハハ!あなた、タオにそっくり!」
思わず笑ってしまった。
「何で笑うのさー。てか、『たお』って何?」
「ごめんごめん。タオは私の幼馴染。
あなたと同じくらい、お菓子が大好きなの。」
そういえば、いつも自分が持っていたお菓子は、タオに全てあげてしまっていたっけ。
そんなことを思ったら、急に懐かしくなってきた。
「よし、分かった。
これからは、あなたのために、いつも何かお菓子を持っていようかな。」
「本当?ありがとー!
俺、絶対食うから、誰にもあげないでねー。」
「はいはい。」
それからしばらく私が彼の様子を見ていると、彼は『あっ』と何かを思い出したように声を漏らした。
「自己紹介まだだった。
俺、紫原 敦。よろしくねー、成琉ちん。」
紫原くん。
その名の通り、髪も紫色である。
こうして私は、またまた『キセキの世代』の1人になる、紫原 敦君と仲良くなった。
その後、私はいつも鞄の中にお菓子を入れておくようになった。
―――ねぇ、紫原くん。美味しい?
―――うん、美味しいよー
―――1つ、ほしいな・・・・
―――ん
―――ありがとう。 パクっ・・・!!すごく美味しい!!
―――――――――――
最近、うま○輪にハマりだした私です・・・・!
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