人間になりたい猫

□特殊能力
1ページ/1ページ




私の本当の名前はナルカカ。



カカ族の1人だ。



だから、たとえ私が一条 成琉の姿になろうとも、他の人にはない特殊な能力が備わっている。



例えば、部活の時に発揮している馬鹿力がそうだ。



けれど、勿論それだけではない。



これからの学校生活の中で、私はその他の能力も発揮していくことになる。









ある日の放課後。



私はいつものようにドリンクのタンクを運んでいた。



そして、体育館と体育館の間を移動している時だった。



『おーい、そこのお前、聞こえるかー?』



「ん?」



横から声がして、顔をそちらに向けると、そこにはいくらか植物が生い茂っていた。



なるほど、と思って私はその植物に近づいた。



「聞こえるよ。どうしたの?」



『やっぱりな。お前、カカ族の奴だろ?』



「そう、良く分かったね。」



今、私が喋っている相手は人ではない。



目の前の植物だ。



そう、私には植物や動物などのあらゆる自然と会話ができるという特殊能力があるのだ。



『それでだな、お前に頼みがあるんだ。

最近日差しが強くなって、暑くなってきた。

ここら辺は結構日差しがもろに当たるから、俺らはいつもカラカラになっちまって苦しい。

だから、この暑い時期はここら辺で水撒きをしてほしい。』



「・・・なるほどね。」



確かに、今もここら辺は日差しが良く当たっている。



今はそこまでではないが、夏は本当にすごいのだろう。



勿論、私はカカ族として、自然も大事にしていきたい。



だから、迷わず頷いた。



「分かった。

ちょっと道具用意してくるから、待ってて。」



『おお、済まないな。』



とりあえず、タンクを置いてきて、そのついでに水撒きの道具をそろえて持っていこうと思い、私は1軍の体育館に急いだ。









「さつきちゃん、ジョウロってある?」



「え、ジョウロ?確か、あったとは思うけど・・・・いきなりどうしたの?」



さつきちゃんは私の急な発言に、やはり少し不思議そうな顔で私を見た。



「いや、ちょっとね・・・。

悪いんだけど、今すぐ使いたいんだ。」



「分かった、ちょっと探してみるね。」



「うん、ありがとう。」



それでも、彼女は何の疑いもなくジョウロを探しに行ってくれた。



私はその間にもドリンクを皆に配ってしまおうと動き始めた。









「うおっ、やっちまった!」



その時、ある1つのグループから、そんな声がした。



見ると、どうやらボールを高く投げすぎて、上の出っ張った場所に入ってしまったようだ。



1人がボールを取りに行こうとグループの中を抜けたが、私はその彼に声をかけた。



「ボール、私が取りましょうか?」



「いいのか?」



「任せてください。」



普通に取りに行くのでは、わざわざ階段を登らなければならないので、結構なロスタイムだ。



この場合は私の出番だろう。



―――タンッ



私はその場で上の出っ張りに向かって片足で床を蹴った。



すると、それだけで私の身体は高く飛び上がった。







これも特殊能力の1つだ。



カカ族が最も誇る脚力は、人間の姿になっても健在なのだ。



長老にはあまり人には見せるべきではないと言われたけれど、やっぱり仲間の力になれるのであれば惜しまず使いたいと私は思う。







柵を掴み、私は出っ張りの上に着地した。



「はい、ありましたよボール。」



ボールを見つけ、下にいた先ほどのグループに投げて渡した。



そこでふと気が付く。



周りがシンと静まり返っていて、皆の視線が私に向けられていることに。



「(まぁ、それもそうか。どう説明しようかな。)」



けれど、私はそう思いつつ、まずここから降りてしまおうと柵に手をかけ乗り越えた。



その時―――



「危ねぇ!!」



「え!?ちょ――― 」



着地する位置にいきなり青峰君が現れ、私は驚いた。



どいて、と言う暇もなく、私はそのまま青峰君に突っ込む形となった。










―――ガッ!!



しかし、痛みは全くなかった。



何故なら、私は彼に受け止められていたからだ。



「青峰君、なんで―――



「ばっかやろう!!!何やってんだ!!!」



『私をわざわざ受け止めたの?』と聞こうとする前に、青峰君は私に大声で怒鳴った。



「そのまま飛び降りるって、正気かよ!!

お前、骨でも折るつもりだったのか!?」



「え、いや、あのまま飛び降りても私は―――



「あ゛あ゛?」



「ご、ごめんなさい・・・。」



『大丈夫だった』と伝えようとしたのに、彼が怖すぎて、私はつい謝ってしまった。



どうやら、彼は飛び降りることで私が怪我をすると思ったらしい。



でも、それでも私が気になったのは―――



「ったく、心配かけさせんな、馬鹿。」



「・・・あのさ、青峰君。









何で顔赤いの?」



「うるせぇ!!」



何故か彼は怒りつつも、顔が真っ赤だったのだ。



私は思わず笑ってしまった。



「わ、笑うな!!」



「青峰君、ありがとう。」



「!!

お、おう・・・・。」



でも、青峰君が心配してくれたのは嬉しかったので、私は彼にお礼を言った。







「(つーか、なんで俺、あいつの胸が触れただけでこんな赤くなってんだ・・・!?)」



ちなみに、彼がそんなことを思っていたなんて、私は当然知らなかった。









―――それより成琉、さっきのは何だったのか、教えてもらおうか



―――げ、赤司君



―――そうっスよ!俺マジびっくりしたんスからね!?



―――えーと・・・乙女の秘密です



―――えー (←紫原)



―――成琉ちゃーん、ジョウロあったよ・・・・て、なんでこんなに静かなの?



―――あ、さつきちゃんありがとう!!ちょっと出てくるね!!



―――・・・・逃げましたね(←黒子)



―――おい、逃げるな!!(←緑間)










 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ