人間になりたい猫

□連休明けと正式入部
1ページ/1ページ




『おはよ!』



『おはよー!』



連休が明け、再び賑やかな通学路を歩くことになった。



けれど、やはり以前とは全然違う。



「あ、緑間くんだ。」



「・・・成琉か。」



何故なら、バスケ部のマネージャーをしていて、皆と仲良くなったからだ。



私は登校中、早速緑間君を見つけ、声をかけた。



「今日のラッキーアイテムは?」



「のり、なのだよ。」



私が質問をすると、彼は手に持っているスティックのりを私に見せた。



緑間君は相変わらずラッキーアイテムを手で持ち歩いている。



ご丁寧なことだ。









「おはよう、さつきちゃん!・・・と、青峰君。」



「成琉ちゃん、おはよう!」



「おー、成琉。やっと来たか。」



教室に入ると、さつきちゃんに加えて青峰君がいた。



青峰君は私の席にドカッと居座っていて、今の言い方からすると、どうやら私を待っていたようだ。



「わり、英語の教科書貸してくれ。」



「もう、成琉ちゃんに用事って、そういうことだったの?」



さつきちゃんは青峰君が私を待っていた理由を知ると、呆れた表情になった。



「英語いつ?」



「2限。」



「私3限だから、終わったらすぐ返してね。」



「わぁーってるよ。サンキュ!」



私が英語の教科書を鞄から取り出して青峰君に差し出すと、彼はそれを受け取って去って行った。



青峰君は本当に私から借りるようにしたみたいだ。



「本当にごめんね。青峰君はああいう奴なの。許してやってくれる?」



「うん、言われなくても分かってるから、そんなに心配しないで大丈夫だよ。

それに、これから部活でずっと付き合っていくことになるんだし。」



「そっか。

でも、私本当に嬉しいよ!成琉ちゃんが仲間になってくれて!」



さつきちゃんは青峰君の相変わらずさにため息を吐いたが、私が部活の話をすると、すぐに笑顔になってそう言った。



そう、私は今日から男子バスケ部の正式なマネージャーなのだ。



本当は昨日までの臨時だったのだけれど、チームに必要とされて、続けることになった。



最近魅力を感じるようになった仕事をずっと続けられるのはとても嬉しいことだった。









「じゃあ、ドリンク運んできまーす。」



「うん、気を付けてね。」



放課後の部活はこれが初めてだけれど、私はいつものようにドリンクのタンクを運ぶ。



ゴールデンウィーク中にはいなかった、もう1人のマネージャーのみっちゃんには、やっぱり最初のさつきちゃんみたいに驚かれたけど。



「成琉っちー!

やったっスよ!!次の試合スタメンっス!!」



「お、やったね黄瀬君!」



休憩に入り、私のもとに真っ先に飛びついてきたのは、スタメン入りですごく喜んでいる黄瀬君だ。



結局、チャラ男こと灰崎君が部活を辞め、そうなったのだ。



けれど、表向きは暴力沙汰が絶えないために、赤司君に辞めさせられたことになっている。



「よかったですね、黄瀬君。」



黒子君も、黄瀬君のスタメン入りを称賛した。



「黒子君、さつきちゃんからドリンクもらった?」



「はい、先ほどいただきました。」



ついでに、聞いてみると、さつきちゃんは彼にちゃんとドリンクを渡せていたようだ。



それにしても、黒子君のさつきちゃんに対する気持ちが全然分からない。



興味なさそうにしてると思いきや、いきなりプレゼントを贈ったりするから、訳が分からない。



けれど、さつきちゃんいわく、そこがまたいいらしい。



「成琉ちーん、お菓子ー。」



とそこへ、とても大きな紫原君が私にお菓子を求めてやってきた。



私もお菓子をあげたいのは山々なのだけれど、実は赤司君から部活中はたとえ休憩中でもあげないように言われている。



「ごめんね、まだ部活中だから、今はあげられないんだ。」



「えー。」



「部活が終わったら絶対あげるから。」



「むー・・・・。」



すると、紫原君は拗ねた顔をする。



―――あ、可愛い。



でも駄目だ。心を鬼にしよう。



「紫原。」



「げー、赤ちん。」



そんな時、いつの間にか赤司君がこちらにやってきていた。



「練習中はお菓子は禁止。これは命令だ。我慢しろ。」



「ちぇー。」



すると、紫原君は今の一言だけで観念してしまった。



彼は、何故か赤司君の言うことには素直に従う。



もしかしたら、逆に赤司君だけには逆らえないのかもしれない。



そう考えたら、赤司君はすごいと思う。



「成琉、タオルをくれないか?」



「はい、ちょっと待ってて。」



そんな彼に丁度タオルを頼まれて、私はタオルを取りにパタパタと駆け出す。



―――やっぱり、マネージャーは楽しい



その時、改めてそう思った。









.
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ