お題小説
□ちょっと割れたグラスは誰が片付けるの
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「もういい。言い訳なんか聞きたくない」
パンッ。
じわじわとした痛みが頬に広がっていく。
テーブルの上の菓子は器ごとひっくり返って散らばり、オレンジジュースの入ったグラスは倒れ中身がテーブルと床に流れていった。
「……」
無言で布巾と雑巾を取りテーブルと床を拭いていく。下がカーペットじゃなくてよかった。
「日吉と二人きりになるなって言ったはずだよね?それなのに……」
四つん這いで床を拭き続けていると、ずしりとした重みが背中に加わった。
「なんで言い付けを破ったの?」
「……ジロー、足を退けて」
どうやらその重みはジローの足によるものだったようだ。
足を退けるよう言うもさらにぐりぐりと加わる重みに説得を諦め、思考を再びオレンジジュースへと移した。
ジローはしばらく俺の背中を踏んでいると、そろそろ飽きたのか背中から足を退け、菓子の入っていた器やまだ少しだけジュースの残っているグラスを壁に投げつけた。
ジュースの水滴やグラスの破片が飛び散る。その内の一つが頬に当たりピリッとした鋭い痛みがはしった。
「ねえオレなんかもういらない?…日吉の事を好きになったんだろそうだろ!?オレはこんなにも萩を好きなのに!!それなのに…!!」
ヒステリックに叫びながら尚も近くにあるものを片っ端から投げ続けるジロー。
俺は立ち上がってジローを抱きしめ、頭を撫でながら小さく囁いた。
「ジロー。俺が愛してるのはジローだけだよ。大丈夫、大丈夫だから……落ち着いて」
「……本当に?本当にオレだけを愛してる?」
「うん、本当に」
ジローは滲んでいた涙を拭うと安心したように微笑み俺を抱きしめかえして、切れて血が出ていた俺の頬を撫でゴメン、と呟いた。
「…そうだよね、萩がオレを裏切る訳ない。オレがこんなに愛してるんだもん!」
「その通りだよ」
「へへっ………あ、もうこんな時間だ!それじゃあ萩、オレそろそろ帰るC。また明日!」
「え?ちょ……っ!」
ジローはそう言いながら早早に帰る支度を終え、見送りはいいから!と言って部屋から出ていった。
「………フゥ」
ちょっと割れたグラスは誰が片付けるの
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実はこれ一回幸村と柳で書いたんです。
でも最初にこのお題見たときに浮かんだのがタッキーだったのを思い出して変更しました(笑)