記念小説
□*始まりの日
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秋晴れのまどろむ昼下がり。
甘い匂いに誘われてそっと台所を覗く少年がひとり。
「せんせ、なにしてるの」
机の上にある白い物体に白いモノを器用に絞っていると、銀時が扉の陰からじーっと見ていた。
「これですか?」
「ん」
コクリ、と頷く銀時に松陽先生は微笑みながら手招きする。
てこてこ近づくと机に手をかけ背伸びして、その白いモノを不思議そうに見つめた。
「…しろい」
「これは、ケーキと言う物です」
「けーき?」
「西洋のお菓子とでも言いましょうか。甘くて美味しいんですよ」
「ふーん」
「銀時もやってみますか?」
「いーの?」
「ええ」
よいしょっ、と椅子に上がると松陽先生から絞り袋を受け取り一緒にケーキの上に絞っていく。
「そーっと握って…いいですよ。上手ですね銀時は」
「ほんと?」
「はい。私より上手いです」
照れたように頬を赤らめ、隙間を埋めるようにせっせとイチゴを乗せていく。
その姿を目を細め、いとおしそうに見つめた。
「ありがとうございます。最後は私が仕上げますね」