お題お話

俺がお前の明日になるから
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俺がお前の明日になるから
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“坂本は腰抜け”
“仲間を見捨てて宇宙に逃げた”

当時はそんな風に言う奴らも居た。
でも俺は解ってる。
お前がどれだけこの国を、仲間を大事に想っているのか。
“戦うだけが戦じゃない”
お前はよくそう話してた。俺は戦うことしか能がないからお前が羨ましかったよ。知らない事を教えてくれたり色んな話をしてくれて、お前は馬鹿だけど誰より頭が良くて尊敬してた。
だからお前に一緒に宙に行こうと言われた時は本当に嬉しかったんだ。
きっとお前は知らないだろうけど。







「金時知っちょるか?こん世界には“明日”があるらしいぜよ」

辰馬が宇宙に旅立つ前夜、いつの間にか俺達の特等席になっていた屋根の上で星空を見上げながら辰馬が言った。
「はぁ?明日があんのは当然だろが」
「いやいや、そうじゃのうて“今”と同時にこん世界のどこかで“明日”が起きてるゆう話ぜよ」
「いや全然意味わかんねーし」
「あっはっは、確かにのう。なんでも“時差”ゆうて、前に地球は回っちょるゆう話したじゃろ?日付変更線ゆうのが……おりょ?金時〜、寝てしもうたがか?これから面白い所じゃ〜いうんに」

ぐーぐー

「金時〜、起きろ〜」

ぐー

「起きんとチューするろ〜」

…ぐー







チュ






「…なんじゃ、起きちょったんか?」
「…今起きたんだよ。つか何しやがんだ」
「チューする言うたじゃろ」
「本当にするかよ普通」
「わしゃァ嘘はつかんぜよ?」
「威張るなバカ本」
「あっはっは〜っは!?ちょ暴力はいかんぜ、むぐっ」
辰馬の襟をひっ掴み強引に引き寄せ唇を押し付けた。本当に押し付けるだけのヘタクソなキス。当たり前だろ?キスなんかしたことねぇんだから。

「……〜っぷは!!」
「…な、な、???」
ようやく唇を離すと辰馬は目を白黒させて真っ赤になっていた。
「お、おんしゃ、何を、」
「餞別だよ餞別。これが最後かもしんねぇからな」
「最後?」

「だって…あんな遠い所に行っちまうんだろ?」
空を見上げると今にもキラキラと音を立てながら降ってきそうな星星星。手を伸ばせば届きそうなのに、絶対に掴めない光。
お前と一緒だ。

「だから…、」
「…わしゃァここにおるぜよ」
「え!?だって、お前」
「確かに身体は離れてしまうかもしらん、けどわしゃァ“ここ”におる」
辰馬は長い指でトンと俺の胸を突いた。
「おんしの傍におるぜよ」

「…やっぱり、お前の話は訳がわかんねー」
「あっはっは〜そげかね」
嬉しそうに笑う辰馬はやっぱり馬鹿だ。馬鹿だけど、

「辰馬、やっぱり俺…」
「のう金時、もっかいチューしてもえぃかね」
「え!?」
「さっきはおんしから貰ったき、わしからも受け取ってちょお」
「…さっきお前からしたじゃん」
「あんなもんはキスの内に入らん」

するっと辰馬のあったかい手が俺の頬に触れて、吸い込まれるように唇が重なった。
「んっ、」
「力ぁ抜け…」
辰馬の舌が俺を優しく絡め取る。ヌルッとした感触が気持ち悪いけど気持ちいい。頭が芯が痺れていくみたいだ。
「んン…ふぁ、」
「柔らかいのぅ、おんしの唇は…こん肌も、髪も、全部わしのものにしたい」
「ん…辰馬?」
「してもえぃかね?」
唇を離して真っ直ぐ見つめられる。その言葉の意味が解らないほど、俺だってガキじゃない。けど…

ベシッ
「あたっ…何するんじゃ〜」
頭を軽く叩いて顔を背ける俺に辰馬は口を尖らせた。
「嫌だね」
「えっ」
「さっさと行っちまえバカ本」
「金時…」
「…そんで、帰ってきたらそん時は考えてやってもいい…かな」

真っ赤になって俯く俺をボケッと見つめていた辰馬はパッと笑顔を浮かべて抱き付いてきた。
「金時ィ!!」
「おわっ!ちょっ離しやがれバカ!!」
「そげなこと言われちゃあ、直ぐ帰って来てしまうぜよ?」
「…ば〜か、そう簡単に帰ってくんじゃねぇよ」

辰馬の広い背中に腕を回してぎゅっと抱き締めた。その時一瞬キラッと星が流れて、

「……!!」

「ん?何か言ったがか?」
「…ううん」
小さく首を振って胸に顔を埋める。




辰馬

どんなに離れてしまっても、お前の居る場所が俺の明日なら…


俺はここで、お前(あした)を待つよ。






「元気でな」



end



メグたんありがとううう!社長かっこいいよう///辰馬の喋り方難しくて好きなのに書けないもどかしさったらないわ…!←
これからも辰銀仲間として仲良くしてねっ///


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