お題お話

ありふれてなくもない家庭の朝
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ジュー。と、卵焼きを焼く良い香りが、台所に漂う。

「ぎんときー、なあ、ぎんときー」

やる気の無い子どもの声をしばらく無視していたが、

「ぎんときー」

「あー!もううるせーな、ぎんときぎんときって!テメェも“ぎんとき”だろうが!」

振り返れば“ぎんとき”は、鼻をほじりながら見上げていた。

「おなか、へった」

そう訴える子どもと、

「だから今用意してるんでしょうが」

そう諭す男。

互いに銀色の癖のある髪に臙脂色の瞳。

子どもは男をまんま小さくした様な容姿で、男は子どもを大きくした様な――
そう、ふたりはそっくりなのだ。
しかも名をふたりとも“銀時”といった。
「なんだよー…朝からうるせーなぁ…」

銀時(大人)と同じ顔だが金髪の男が眠そうな顔をし、上半身裸で現れた。

「とーちゃん!!」

銀時(小)…いや、紛らわしいので“ちび銀”とこの家庭では呼ばれている方が、金髪の男に飛び付いた。

「おー、ちびー。今日も可愛いなあぁ」

ギュッと抱き締めて頬擦りをする。

「金時、もうすぐ朝飯できるから顔と手を洗ってこい」

「えー?俺、さっき寝たばっかり…」

「子どもの前ではホストじゃないでしょ」

その言葉に観念し、金時はちび銀を抱いて洗面所に向かおえとして、

「じゃあ銀時、チューして!」

ガゴーンッ!と、金時は顔に目玉焼き器をくらった。



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