3
カーテンが春風を孕んで膨らみ、レールが微かな音をたてる。
自然と瞼が持ち上がった。
頭を上げて初めて、スザクの肩に寄り掛かっていた事を知る。
スザクを待っている内に眠ってしまったようだ。
しかもその間にスザクも家に来ていて、俺の隣で寝息をたてている。
…しっかりと指を絡ませて手を繋いだまま。
…手、大きくなったな。
この頃の男子はぐんぐん成長する。
この前の身体計測で分かったのだが、ついにスザクの身長が俺を超えた。
多少複雑ではあるのだが、スザクの成長が嬉しくない訳はない。
…さて。
このまま寝かせておいてやりたいが、そんな事をしたらきっとこいつは後で俺を責めるだろう。
「…スザク」
そっと呟く。
起きる気配が無いので再びスザクの肩に頭を預けた。
「スザク…」
そしてそのまま呼び掛けると、スザクはぴくりと動いた。
「…ぁ………先生…?」
俺は思わず瞬きしてしまった。
それからふっと笑いを零す。
「…久し振りだな。二人でいる時にお前にそう呼ばれるの」
そして俺自身にも僅かながら驚く。
俺はいつの間にか、すっかりスザクの先生から恋人になってしまったんだな…。
スザクは、あ、と呟いた。
「…ルルーシュの夢を見てたんだ。最初に会った時の…」
きゅっと繋いだ指に力が込められる。
そしてそのまま頬に唇が寄せられた。
「ありがとう…」
顔が離れる際に、小さな声が耳を掠めた気がした。
「ルルーシュっ!」
と、俺が何か言い出す前に、スザクは雰囲気をいきなり一転させ、繋いだ手はそのままにじゃれてきた。
スザクのころころ変わる態度に、俺は幾分か置いていかれ気味だ。
…と…年か…?
恐い考えが頭を過る。
が慌てて脳内で否定した。
まだ…、まだ大丈夫…っ。
スザクは俺の名前を繰り返しながら耳や首にキスを鏤める。
しかしこんな風にしていると、本当に犬が戯れているようだ。
「スザク…」
俺が名前を呼ぶと、スザクはやっと唇に触れてきた。
軽く触れてすぐに離れる。
次に、しっとりと重ねて舌で唇をなぞってきた。
「ん…」
スザクの舌は徐々に大胆に動き、身体の奥の方から何かふわりと滲み出してくるような感覚がする。
「ん……、はっ…」
一度離れてから、名残の様に再び軽く触れると、スザクは俺のシャツのボタンに手を掛けた。
元々器用なのか、いつもあっという間に前をはだけられてしまう。
「ルルーシュ…」
スザクの唇が俺の首を鎖骨を胸を滑り、胸の先端で止まると、そこに舌を絡められる。
「ふ……っ、ん…ぁ…」
思わず身体を震わせながら声を漏らしてしまったが、今更重要な事に気付く。
「す…スザク、待て…」
「なに?」
「窓…閉めてくれ」
頼んだが、スザクが愛撫をやめる気配は無い。
「大丈夫だよ。そんな聞こえないって。寧ろお隣さんにルルーシュにはちゃんと恋人がいます、って教えてあげる?」
「馬鹿かっ!お前は俺をここに住めなくするつもりか!?」
スザクの余りの言葉に憤る。
「スザクっ」
呼べどもスザクは一層いやらしく舌を絡めてくる。
「あっ…」
「ほら、声我慢しないと聞かれちゃうよ?」
そう言って、歯を軽く立ててくる。
何とも言えない痺れが走った。
「んぁ…っスザクっ…窓っ…窓閉めて…っ」
切羽詰まって薄く涙が滲む。
「………」
「声…っ我慢…できな…っ」
言いたくないがそこまで言うとやっとスザクは口を離し、窓を閉めに行った。
「…窓閉めたんだから、もうどれだけ喘いでも大丈夫だね」
…あぁ、笑顔が黒い。
「ルルーシュ、上、乗って?」
癪ではあるが、言われるままにソファーに腰掛けたスザクの上に向かい合い、膝で立ってまたがる。
まるで自分が積極的なような体勢に落ち着かない。
スザクは俺が逃げられないように腰をがっちり掴むと、再び胸に舌を這わせ始める。
俺はバランスを崩して、しかし後ろには倒れられず、止むなくスザクの肩に掴まった。
「や…っ…ん…」
悔しい事に体勢上、感じる程身体を近付けるようになってしまう。
「あ…っ!?」
その上、胸から口は離さないまま、スザクは下肢にも手を伸ばしてきた。
「おい、なに……ぁ、ん…っ!」
するりと握られ、膝立ちしている脚がガクガクする。
「スザ…や…だめ…っ」
「駄目とか言ってる割にすごい感じてるよね」
「ひぁあ…っん」
下を扱きながら、ねっとりと胸を舐め上げられ、思わずスザクの頭を抱き込む。
「ルルーシュ…なんかそれエロい…」
「はぁ!?」
俺は腕を離して、涙目でスザクを睨み付けた。
「可愛いって事だよ。そうやって睨むのもさ、誘ってるようにしか見えないし」
様々な感情がない交ぜになって、かあっと一気に自分の中を駆け上る。
「…バカっ!この…ばか…っ!」
そう俺に尽く詰られても尚、嬉しそうにしているスザクを、これ程までに愛しいと感じている俺自身もまた、相当の馬鹿なのだろうな…。