混沌の世界

□年明けの恋人達
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「ハッピーニューイヤー!!」


外から明るい声が聞こえてくる。


「もう年が明けたのか…」


新年の空気でも吸いに行くか。


そう思って家から出ると空から雪が降っていた。



遠くでは家族たちが寄り添いあい、幸せの暖かさがにじみ出ていた。


今年も一人過ごすお正月。


プルルル…プルルル…



携帯が鳴った。誰だろう?


「シド、ハッピーニューイヤー!」


電話の奥から聞こえてくるのはマリアの明るい声だった。


「ハッピーニューイヤー、マリア。」


僕も笑顔で返す。
彼女に笑顔は見えないけど。


「今年も寒いわね。」


マリアの声は寒さで震えていた。



「外に出ているのかい?君は体が弱いんだから気をつけないと風邪をひいてしまうよ。」


「もうシドったら相変わらず心配性ね!」


そう言うと彼女はクスクス笑う。


「誰かと一緒に居るのかい?まさかこんな寒い日に一人じゃ…!」



「居るわよ!」


急に後ろから声が聞こえた。


「来ちゃった。」


振り返ると、マリアが携帯を握りしめて立っていた。
体は小刻みに震えている。



「こんな遠くまで一人で来たのか!?」


僕は茫然としてしまった。



「本当に今日は寒いわねぇ…。」



マリアの吐息は雪の様に白かった。



「そうだ!!早く温めないと…!!」



僕が焦って彼女に背中を向け家に入ろうとすると、突然マリアは僕の背中を優しく抱きしめた。



「こうしたら寒くないわ!」



彼女はそういいながら無邪気に笑う。



僕も彼女のほうに顔を向け、包むようにして彼女を抱きしめる。



「ね?」



「確かに」



僕もついそんな彼女の言葉に笑ってしまった。



「…これからもこんな風にずぅっと一緒にいようね。」



そういうと彼女は頬を赤くして僕に笑いかけた。


「うん。」


「絶対よ?」


「約束する。」


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遠くに恋人達がいる。



恋人達は優しく抱きしめあい、幸せの暖かさがにじみでていた……

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