+忘却のマリア+

□第11話 第10次 ノヴァクラッシュ
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「あっ! ソラヒメっ、ダメっ……!」

「シフォンさんって、ココ弱いですよね〜」


2人きりの生徒会長室でソラヒメはシフォンの鎖骨に舌を這わせていた。


「痕つけてもいいですか?」

「ダメです」

「え〜っ、私のモノだってちゃんと証つけとかないと〜。変なムシが寄ってきたら困ります!」





第11話 第10次 ノヴァクラッシュ





「あら、あなたを敵にまわそうなんて人はそうそういませんわよ」

「う〜。だって〜」

「聞き分けのない子はこうですわよ」

「うわっ!? わ、わ、わ……!」


視界が反転したと思うと形勢逆転と言わんばかりにソラヒメはシフォンに組み敷かれた。


「し、し、シフォンさん……!?」


途端にソラヒメの頬が赤く染まる。


「怖いですか?」

「……っ!?」

「大丈夫ですわよ」


ノヴァが4体同時に現れるという、異例の事態にソラヒメが怖がっていると思ったシフォンは安心させる様に微笑む。


「シフォンさん……」

「私が側にいます」


少しきつく抱きしめられれば、聞こえてくる鼓動に安堵する。


「……ノヴァは、怖くないです……。自分が、怖い……」

「ソラヒメ?」

「疼くんです……。あの時、斬り落とされた腕が……」


第8次 ノヴァクラッシュの時に、ソラヒメは記憶だけではなく、右腕も失っていた。

今は綺麗に再生した腕でシフォンを抱きしめる。


「自分が、自分じゃなくなるみたい……!」

「ソラヒメ……。大丈夫ですわよ。あなたはあなたでしょう?」

「シフォンさん……」

「愛してますわ、ソラヒメ」


ソラヒメの顎を捕らえるとゆっくりと唇を寄せる。



コンコンコン



「のわあぁっっ!!」

「あら〜」


唇が触れ合う前に視界に入ってきた人物に飛び上がる。


「一応、ノックはしましたよ……」

「この非常時に何をしているんです!!」


そこにいたのは、ティシーと、エリザベスであった。


「ティシーさん、エリーちゃん」

「あら〜、エリザベスさんったら、覗きは悪趣味ですわよ〜」

「何を考えているんです!!」

「冗談ですわよ」


エリザベスに軽口を叩きながらも、シフォンはソラヒメを放さない。


「いつまで、そうしてるつもりです?」

「今ぐらいゆっくりしたっていいじゃありませんか」

「エリーちゃん、どうしたの?」


珍しく生徒会長室を訪れたエリザベスにソラヒメは首を傾げる。


「あなたを探しに来たんです」

「……私?」

「シスター・マーガレットが呼んでるわよ」


きょとんとしているソラヒメにティシーが説明する。


「放送聞いてなかったの?」

「放送なんてかかってましたっけ?」

「さあ〜? どうでしたでしょう?」


ティシーの問いにシフォンを仰ぎ見るが、シフォンもはてな顔だ。

イチャイチャしていた2人の耳には届かなかったようだ。


「あなたが何度も呼び出されているから探しに来たんです。今度は、一体何をしたんです?」

「へ……? んん〜」


呼び出しの理由を聞かれ、ソラヒメは考え込む。


「心当たりありませんの?」

「いや、あり過ぎて……」

「ソラヒメ……」

「もういいですから……。早く行きなさい」


授業をサボったことか、水道で遊んで廊下を水浸しにしたことか、化学の実験中に違う薬を混ぜて爆発させたことかと、指折り数えているソラヒメに呆れ顔だ。


「ええっ!! 私まだシフォンさんとイチャイチャした……」

「いいから、行って来なさい!!」

「……は〜い」


エリザベスに怒鳴られ、仕方なくソラヒメは生徒会長室を後にする。


(……まあ、予想は付いてるけどね……。今、このタイミングで私を呼ぶ理由なんてひとつしかないし……)


先ほどまでとは打って変わって冷たい眼差しのソラヒメは疼く右腕を押さえながら、校長室を目指す。

その顔に、好戦的な笑みを浮かべて……。





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