+忘却のマリア+

□第2話 2人の問題児
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「ソラヒメ。起きてください、ソラヒメ」

「ん、ん〜……」


スヤスヤといまだ夢の中のソラヒメにシフォンは大きな溜息を付く。





第2話 2人の問題児





「ソラヒメ! 遅刻しますよ!」

「ううん〜、あと5分〜」


何度もシフォンに声をかけられるが、ソラヒメはイヤイヤと頭までシーツに包まってしまう。


「もう、置いて行きますよ」


いまだベッドの中のソラヒメと違い、シフォンはすでに制服に身を包んでいた。


「それはイヤです〜」

「だったら早く起きてください」

「シフォンさんが『おはようのチュー』してくれたら起きます」

「なっ!? ……ソラヒメ!!」


イタズラな笑みを浮かべてソラヒメはシーツから顔を出した。


「今日は誰も見てませんよ」

「だ、だからって……」


頬を赤く染め戸惑っているシフォンの腕を掴み、ベッドに引き戻す。


「じゃあ、チュー以上の事しましょうか?」


そう言いながらソラヒメの両腕がシフォンの身体を撫で上げた。


「あんっ!! だ、ダメ! ソラヒメ……!」

「だから、チューで我慢するって言ってるじゃないですか」


ニヤリと笑って見せると、ソラヒメは目を閉じた。

観念したシフォンの顔が近付き、そっと遠慮がちにソラヒメの唇に触れる。


「んんっ!? うん! ……ふぁっ!」


だが、もちろんソラヒメがそれだけで満足する訳が無く、シフォンの後頭部を固定し深く口付けた。

何度も角度を変え、互いの唾液を交換し合い、シフォンの唇を堪能する。


「ん……、はぁ……」


唇が離れると荒い息を付きながらもたれ掛かってくるシフォンにようやくソラヒメは満足気な笑みを浮かべた。





+++++





「あっ! エリーちゃん、おはよっ!!」

「今日は早いですね」

「えへへ〜」


賑やかな食堂の一角でエリザベスを見つけると、ソラヒメは嬉しそうに駆け寄った。


「珍しいわね、こんな時間に起きてるなんて」

「雨降るんじゃないの〜?」

「アーネットさん、ヒドイです〜! 私だってたまには早起きするんですから!!」


からかうアティアと、アーネットにソラヒメは頬を膨らませた。


「ソラヒメ」

「は〜い」


エリザベスが向かいの席を示すと大人しくそこに座る。


「ご機嫌ですね、何かいい事でもありましたか?」

「えへへ〜」


この中では1番長い付き合いなだけあって、エリザベスはソラヒメの些細な違いを敏感に感じ取っていた。

当のソラヒメは幸せそうにニターと締まりのない満面の笑みを浮かべている。


「……」


そんなソラヒメの様子にエリザベスは眉間に皺をよせた。


「エリーちゃん? ……あ、シフォンさ〜ん!! ここ空いてますよ!」


不機嫌な様子のエリザベスにソラヒメは首を傾げたがシフォンの姿が目に入ると立ち上がり、手を振る。





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