+忘却のマリア+
□第5話 デート日和
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「るんるるん、るる〜ん!」
ただ今の時刻6:45
普段なら絶対に起きていない時間にソラヒメは鼻歌を歌いながら、バスルームから出てきた。
鏡に映る自分に微笑みながら久しぶりのデートに思いを馳せる。
第5話 デート日和
「なんか、機嫌悪く無い? エリザベス」
「そりゃあそうでしょ。昨日あれだけデートだって騒がれちゃあ……」
明らかに不機嫌なオーラを放ちながら朝食をとっているエリザベスを触らぬ神に祟りなしと、アティアと、アーネットは遠巻きに見つめていた。
「あっ! エリーちゃんいた!!」
「ソラヒメ……」
そんなエリザベスの姿を見つけるとソラヒメは嬉しそうに駆け寄った。
「おはよう、エリーちゃん!!」
「おはようございます。早いですね」
「えへへ〜」
「……」
締まりの無い顔でにやけるソラヒメにエリザベスの眉間に皺がよる。
「エリーちゃん、変じゃない?」
「大丈夫ですよ」
「ホントに!?」
ミニスカートに、キャミソール、その上からパーカーを羽織っている。という至って普通の格好でソラヒメはクルリと一回転してみせる。
その姿にエリザベスは笑みを浮かべた。
「ちゃんと可愛いですよ」
「えへへ」
エリザベスの言葉に満足したのであろう、照れながらも満面の笑みを浮かべる。
「髪はそのままでいいんですか?」
「やって〜!」
そう言いながら櫛を差し出してくるソラヒメに溜息を付きながらも、自身の前に座らせると、その長い髪を梳いていく。
「随分伸びましたね」
「うん。だって切りに行くのめんどくさいもん」
「あなたは、それでも女の子ですか!?」
「ふえっ?」
あまりにもズボラなことを言うソラヒメにエリザベスは呆れ果てた。
「う〜ん……。一応……、胸もあるし〜」
「そういうことを言ってるんじゃありません」
「だって〜。じゃあ、エリーちゃんが切ってよ」
「ちゃんと美容院に行きなさい!」
「エリーちゃんの方が気持ちいいんだもん」
深い溜息を付くエリザベスを振り返り、ニッコリと微笑む。
「……!?」
と、ほんのりとエリザベスの頬が赤く染まった。
「エリーちゃん?」
「っ!? ……何でもありません!」
自分でも赤くなっているのがわかったのか、慌ててソラヒメに前を向かせると、髪を梳く腕を忙しなく動かす。
「はい、出来ましたよ」
「わあっ! さっすがエリーちゃん、ありがとう!」
いつもとは違い、鏡に映るポニーテール姿の自分に満足気な笑みを浮かべる。
「楽しんでいらっしゃい」
「うん! 行って来ま〜す!!」
心底幸せそうなソラヒメを見送り、エリザベスは人知れず深い溜息を付いた。
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