小説
□愛の法則はたった一つ、だそうです
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時はオーストラリア戦直前、練習禁止時の海に行って帰ってきてからの事だ。
「たちむかー……、おーわりぃ!読書中?」
「綱海さん!どうしました?」
恋人の部屋にでかい声を出して遊びに来た俺は、趣味の時間をじゃましたかと一瞬扉を閉めかけた。
「いや、大した用じゃねーんだ」
「そうですか……?」
少ししゅん、としたような表情が見て取れる。こういう些細なところまですぐ表情に出るところがかわいくて仕方ない。
「じゃーちょっと寄ってっていーか?暇でさぁ!」
「練習できないですもんねー、あ、どうぞ!」
立向居が差し出してくれたクッションに腰掛けて、本読んでていいぞー、と言っておいた。そう言わなきゃきっと俺に気を使って本読まないだろうし。
裏表紙には 吹雪 と書かれている。どうやら吹雪のなんだなこれは。
俺はあまり本を読まないタチなので、小説という類のものは全て難しく見えてしまう。
「面白いかー?」
「……うーん、面白い、というか……」
そう一言呻くように言ったきり、また立向居は本に没頭していった。
(ま、あと4〜5ページっぽいしな)
待っておくとしよう。
会話のないこんな何でもない時間が愛おしく思えるのはきっと、とても離れていた時期があったからで。
寂しかったけれどきっと、あれはあれで俺たちの間にあってもよかった時間なんだ、とこうして近しい今なら思える。
そんな重いを頭の中で巡らせているうちに、どうやら立向居は本を読み終わったようだ。
本を閉じてふぅ、と一つため息をついた。
「どーだった?」
感想を聞くと、立向居は少し複雑な顔でハハ、と笑った。
「感動系だったのか?」
「あぁ、いやぁ何というか……報われないお話でした。……悲しいなぁ、って」
そう言うと後ろ側に座っていた立向居は俺の方に後ろから頭を乗っけた。こいつからスキンシップをとってくるなんて珍しい。
少し茶化すように どうしたよ〜! と言いながらわしわしと頭を撫でてやる。
そして立向居が零れるように呟いた一言はとても意外なものだった。
「綱海さん。俺、綱海さんのこと、好きです」
その言葉に俺の手の動きはぴたりと止まる。
一応付き合っている俺達だ、端から聞いてもその言葉は今更なものに聞こえるだろう。
でも立向居は態度にこそ出るものの、普段から言葉でこういうことをサラリと言う性格ではないのを俺は重々理解していた。
だからこそかなり驚いた。
「綱海さんも俺のこと¨好き¨って言ってくれて、凄く幸せで、でも、時々凄く怖くなるんです……ねぇ、綱海さん」
俺の恋人は普段こんなにも饒舌だったろうか。
小さな、小さな震えた声で、立向居は呟く。
「綱海さん、終わりなんて、こないですよね……?」
胸が詰まって言葉が出なかった。
嬉しかったんだ。
ここまで立向居が俺のこてを好いていてくれて、それが尼こうやって目に見える形で表してくれていることが。
(あー、俺ってやっぱ馬鹿なんだな)
正直、ちょっとだけ不安だった。
俺は凄く立向居のことが好きで、ずっと一緒にいたくて。 立向居が拒まないことをいいことに得るが畳む回を一方的にとどめてしまっているのかも、とも、離れている間には考えた。
自分はこんなにも、想われていたというのに。
「こねぇよ、終わりなんて」
振り返って立向居を抱きしめた。
「俺普段本とか読まねえけどさ、沖縄のダチが言ってた小説のフレーズがあってよぉ」
「……どんなの、ですか?」
記憶をゆっくり辿るとその言葉はすんなりと頭の中に浮かんできた。
「愛、と一言に言っても、この世の中ないろんな人がいていろんな愛の姿がある。でも、どの愛にも共通している法則は、たった一つ、『ただ互いが一緒にいたい』という強い願いがあること」
そこまで言って声が詰まった。やべぇ、泣きそうだ。
「逆に、それがある間柄にはどんな形であろうと愛があると言えると私は、思う…………その通りだって思ってたから、はっきり覚えてるんだ」
抱きしめたままなので立向居の表情は見えない。
でも肩に伝わるあたたかい感触つ小刻みに揺れる立向居の肩、きっと泣いているんだろう。
でもそれは俺も同じ。少しの涙と感情が、溢れた。
「まだ中学生だけどよ……」
「……はい」
「立向居のことだいすきだかんな!」
「……っ、」
「愛してる、からな……!!終わりなんてこねぇよ」
「……はいっ!」
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企画に提出させていただきました!!
本当にぎりっぎりになってしまって申し訳ないです;;
お題にそえているか今一つ不安ですが書いている本人は凄く楽しかったですw←
ありがとうございました!
2010.3.31 希璃
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