キョンのNOVEL3

□四章
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「ねぇ、ちょっといい?」
突然後ろから聞き覚えのある声が。
僕の背中をつついている。
「私の名前覚えてる?」
「鈴香だろ。もうちゃんと覚えてるよ」
実は昨日帰る直前に何十回も耳元で名前を連呼されたのだから。
「よろしい。でさ、ちょっと聞きたいことがあるんだけど」
その時僕は早くトイレに行きたかったので適当に聞いてスルーしようと思った。
だがこの話を聞いた瞬間トイレどころでは無くなってしまう。
それに僕は気付かなかった。
「一緒に旅行へ行ってほしい!?」
話しを聞くとつい最近懸賞で北海道旅行が当たったらしい。
当初は両親のどちらかと行く予定だったのだが急な仕事でいけなくなったのだ。
その日は次の週の三連休。
ペア旅行券なので行けるのは二人だけ。
「ダメだって。大体中学二年の男女が二人で旅行に行くってのがおかしいよ」
僕は激しく首をふった。
「大丈夫だよ、私はそんなこと全然気にしてないし」
そんな問題じゃないっての。
ていうかもしこんなのが拡輝にバレたりでもしたらそれこそ何を言われるか。
「いいじゃねえかよ。行ってこいよ」
「うーん、でもなぁ。やっぱり…、って拡輝!それに真まで!お前ら盗み聞きしてたのか?」
二人が変に嬉しそうにこっちを見ている。
「私一回ぐらい旅行してみたかったの。母さんも父さんも仕事で忙しそうだし」
うっ、そんな寂しそうな表情をされると。
後ろからは二人が何やらガッツポーズをしている。
何のサインだよ。
なんだか寂しそうだし断るのも悪いよなぁ。
悩みに悩んだ結果やっと答えが出た。
「わかったよ。僕も暇だし一緒に行こう」
そう答えると鈴香は飛び上がった。
「やった!ありがとう智也!」
そう言い残すと上機嫌で走っていった。
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