キョンのNOVEL3

□二章
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その後の時間はあっという間に過ぎて放課後。
クラスの皆が楽しそうに話し合っている中、一人だけ今にも倒れそうな目をしている拡輝がいる。
「やべえよ、緊張してきた。一体なんていえば」
声が震えている拡輝を元気づけながら屋上に向かわせた。
僕と真は勿論あとを追いかける。
拡輝が屋上へ出た後、その窓を少しだけ開けてのぞいてみた。
「ねぇ、空さんもう来てるの?」
さっきまでは僕を止めていた真だが、やはり興味あるんだ。
「お、いるいる。拡輝の奴、大丈夫かな」
「単刀直入に言う、俺と付き合ってください!」
言った、お前はやっぱり男だ拡輝。
しばらくの間、沈黙が続いた。
その沈黙を破ったのは、放課後のチャイムだった。
空ちゃんが何か言った。
ここからではよく聞き取れないが、建物から出るわけにもいかない。
話し合いが終わったようで、空ちゃんが戻ってきた。
「やばい! 隠れないと!」
「智也、こっちだよ」
隅の方に置かれた机の山の中に隠れた。
普通に扉が開く音。
そして、閉まる音の少し後に階段を降りる音が聞こえた。
そろろそ大丈夫かな。
辺りを確認しながら出た。
「そうだ、拡輝は」
扉を開けると、屋上のど真ん中で座り込んでいる拡輝がいた。
ダメだったんだな…。
「元気出せよ、また次があるって…」
「そうだよ。今回はダメでも次は大丈夫ってこともあるし」
とりあえず、精一杯励まそうと頑張った。  
「二人とも、なんで俺がフラれた感じで話進めてんだ?」
え、それはどういう。
僕と真は目を丸くして向かい合った。
「両思いだったんだ、これからよろしくね、だってさ。やったぜ!」
拡輝は勝ち誇ってガッツポーズをした。
まさか成功するとは。
「二人とも、俺はやったよー」
今にも泣いてしまいそうな表情でこっちを見てくる。
本当に嬉しそうだ。

帰り道。
真は先に帰ったため今僕は拡輝と二人でいる。
ゆっくりと自転車をこぎながら今日のことを振り返っていく。
「それにしても拡輝に彼女ができるとは、夢でも見てるみたいだよ」
「何だとー、俺は意外と人気あるんだよ」
まあ俺よりあるだろうな。
「智也も早く彼女作れよ」
だから僕にはそんなの興味ない。
それ以前に僕みたいな奴を好きになるような物好きな人はいないだろう。
「僕はいいんだよ、じゃあな拡輝。また明日」
おう、また明日な」
走っていく背中を見送った。
色々言ったけどさすがだよ、拡輝は。
今回は素直に言ってあげよう。
おめでとう・・・。
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