キョンのNOVEL3

□二章
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朝の光が部屋全体に射し込んでいる。
その光で僕は起きた。
「ふう、昨日はソファーで寝たんだっけ」
秋になってから少しずつ冷えてき始めた。
半袖半ズボンでは少し寒い。
時計を見ると、七時を回っていた。
朝飯でも作るか。
僕は、小学二年生の時に両親を失くしている。
親戚もいなかったので、一人暮らしをもう六年近くしている。
幸い、両親はお金を普通の家の三倍近く貯金をしていたので、今はそれで生計を立てている。
家はそれほど大きくはないが、それなりの家具などは揃っていて困るようなことはない。
「さて、そろそろ行くか」
玄関を出て自転車に乗ろうとしたら、後ろで聞き慣れた声が聞こえてきた。
「おーい、早く行こうぜ」
二回ほど自転車のベルを鳴らす。
全く、近所迷惑な奴だ。
「拡輝、頼むからベルを鳴らすのは止めろ」
「いいじゃねぇかよ。早くしないと遅刻するぜ」
とりあえず、ペダルを漕ぎ始めた。
秋の涼しい風が、心地よく吹き付けてくる。
「昨日のあの子、どこに住んでるんだろうなぁ」
心地よい風を切り裂くような質問だ。
まだ諦めていないのか。
本当のことを言うと、何をするのか分からないから黙っておこう。
そんな話をしながらいつものように学校へ向かう。

教室に入り、荷物を机の上に置く。
僕の席は一番後ろだ。
いつものように生徒達が楽しく話している。
「智也、拡輝。今日は随分早いじゃないか」
「真(しん)、久しぶりじゃねぇか」
いち早く拡輝が真に飛びつく。
小学生みたいな奴だな。
まぁ、そこが良いとこでもあるんだけどな。
「風邪も治ったし、もー体調万全だよ」
真は、ここ二、三日程の間、風邪で学校を休んでいたのだ。
皆にはクラスで一番の紳士という愛称で慕われている。
「馬鹿みたいに飛びつくなよ。それにしても風邪ひくなんて珍しいな」
久々に三人で話していると、先生が入ってきた。
「さっさと座れー。今日は突然だが転校生を紹介する。入ってくれ!」
少し強く扉が開けられた。
そこにいたのは、女の子だった。
「すげぇ、めっちゃ可愛い!」
クラスの男子達が、一斉に騒ぎだす。
「可愛い子だよなぁ…って智也、あれ昨日いた女の子じゃねぇか」
本当だ。
もう一度女の子を見ると、確かに昨日絡まれていた子だった。
最近引っ越してきた(拡輝には内緒)って言ってたけど、この学校に来るとは。
「静かにしろテメェら。この子の名前は西田 雪(にしだ ゆき)。この前隣町から引っ越して来た子だ。それじゃあ、自己紹介を頼む」
「あ、あの…西田 雪といいます。よろしくお願いします」
皆から拍手で迎えられる。
…西田 雪。
僕は、あの頃のことを思い出した。
小学校に入学したばかりの時だ。
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