キョンのNOVEL3

□二章
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放課後になった。
教室のあちこちで話し声が木霊する。
僕は部活に入っていないのでそのまま帰ろうとした。
「おーい、今日暇か?」
拡輝が珍しくまじめに聞いてきた。
まぁ、どんな用かは創造はつくが。
とりあえず、OKすることにした。
三人で僕の家に向かい、到着するとすぐに二階に上がった。
「で、相談って何だ?」
さっき入れてきた珈琲を飲みながら聞いてみた。
窓からは丁度いい風が吹き込んできて、カーテンを揺らしている。
この部屋は二階でも一番広い部屋で、今は真ん中にテーブルがおいてあるだけだ。
つまり、殺風景としかいいようがない。
「え、いや…。好きな人に告白したいっていうかなんというか…」
「確か西田さんだっけ? 可愛くて凄く人気だからね」
真がそう言った。
僕も同じことを考えていたので言う手間が省けた。
だが拡輝は、僕達の予想を裏切る答えで返してきた。
「いや、その人じゃなくて隣のクラスの空(そら)ちゃんが」
隣のクラスにそんな人いたっけ。
ていうか、僕はそもそも違うクラスの子とは全くと言っていいほど面識がない。
「智也知らないの? 一年生の時に同じクラスだったじゃん」
真が色々と教えてくれたが、思い出すことはなかった。
思えば、僕は拡輝や真達以外とはあまり話したことがない。
クラスの男子とは普通に話せるが、女子とは話せないだろう。
「とにかくだ。僕達に相談するまでもなく告白すればいいだろう」
「それが出来ないから困ってるんだよ…」
くそ、こいつは幼稚園児か。
とりあえず、無理矢理引っぺがして大人しくさせた。
「要するに、協力してくれってこと?」
「おぉ、よく分かったな真。話の分かる奴だよ、お前は」
誰だってわかるって。
いつもは強気なくせに、こういう時だけはダメな奴だな、拡輝は。
まぁ、それ以前に僕はそんなことを経験したことがないので全く分からない。
こういう時は真がよく知っているだろう。
「放課後に屋上に来てもらうとか? あそこだったら誰も来ないだろうし」
僕がいつも昼休みに寝ているところだ。
「恥ずかしくって呼び出せないよ。そうだ、智也。頼んだぞ」
「んなぁ!? 何で僕がそんなことしないといけないんだ。大体自分の事ぐらい自分でしろよ」
「まぁ、そんなこと言わないで協力してあげてよ智也」
いやいやいや、女子と話したこともほとんどないような僕がそんなことできる筈がない。
必死に断ったが、抵抗も空しく押し付けられてしまった。
そのまま二人は帰ってしまい、殺風景な部屋に僕だけになった。
明日の昼休みまでに何とかしろなんていくらなんでも急すぎる。
明日のことを考えると、今日はなかなか眠れなかった。

次の日の休み時間。
僕は何度もクラスの前を通りチャンスを伺った。
これではまるで僕がストーカーみたいだ。
この時間は一度もチャンスはなく、次の授業の始まりのチャイムが鳴った。
後チャンスは二回、二時間目と三時間目の間、そして三時間目と四時間目の間だけだった。
そのことばかり考えると、授業も全く身が入らない。
まぁ、普段から寝てばかりいるけど。
そうこうしているうちに次の休み時間になった。
隣の教室に行こうとしたときだった。
少々鈍い音と同時に痛みが走った。
「あの、大丈夫?」
「あ、うん。なんとか」
どうやら出会い頭に衝突してしまったらしい。
それにしても凄く石頭なのかは知らないが、かなり痛かった。
まぁ、向こうは何ともない様子だが。
「あれ? 君もしかして空って名前か?」
昨日あれからアルバムを引っ張り出して顔を覚えた。
どうやら成果はあったようだ。
軽く頷いて返してきた。
「あのさ、えっとその…空さんに話したいことがあるって言う子がいるんだ。だから放課後に屋上へ行ってあげてくれないか?」
「いいですよ。ではまた」
空ちゃんはどこかに歩いていった。
ふう、とりあえずミッション完了だ。
僕は意気揚々と教室に戻り、拡輝の方へガッツポーズをした。
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