The end of eden〜楽園の終焉〜

□第十話
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青白く冷たい空気を纏う月を自室の窓から眺める。

自分の部屋に戻るまで大分時間が掛かった。

風呂から上がって居間に戻れば、雲雀さんと骸さんは何やら笑っていたし。

何を企んでいるのか、と疑わしい目で見れば彼らは何でもないと誤魔化してきた。

取り合えず、俺は明日も学校で、そうなるとこの二人を置いていかないといけない訳で。

そう説明したが、果たして聞いていたかどうか。

俺は溜息を吐いて、机の上に置いてある何も書かれていない符を見遣る。





「・・・・・・結局、書けなかったなぁ」




まぁ、まだ予備はあるから良いけれど。

とは言え。

俺は空を仰ぐ。

瞳を細めて、散りばめられた星を見据える。

漫画の世界から、トリップしてきた?

馬鹿な、此処最近の星の動きに異常はない。見逃した覚えも無い。

自信過剰ではない。過信でもない。―――自負、だ。

そして、今も尚。




「―――星の動きに異常は、無し、か・・・」




これは、在り得るのだろうか。

本来ならこんな事は在りえない。在り得ない人間がこの世界に来るなどとは。

きぃ、と椅子を鳴らす。暫く熟考していると、不意にコンコンと窓を叩く音が聞こえそちらへと目を向ける。

視界に映ったのは、白い鳥。

式文、である。

窓を開けて式文を招き入れると、白の鳥は瞬く間に白い紙へと変じた。

先程、陰陽寮という日本に居る陰陽師を纏める機関に此処最近異常はないかと式文を送っておいたのだ。

陰陽寮からの返答は。




「・・・異常は、見受けられない、か・・・陰陽寮でも無いだなんてな」




微かに頭の隅でそうは思っていた。信じたくなかった、とは言いすぎではあるが、確認の意味である。

この世界にまだ歪みは、ない。それが陰陽寮の見立てである。

そして、俺の占いも、そう告げている。

もしも彼らが俺の目の前に居なければ、気付かなかった。

椅子を傾けて、二本足でバランスを取りながら腕を組んだ。

考えても、占じても星見をしても占盤で占っても、何も出なかった。何時もどおり妖の情報など、些細な事。

情報が少ない、と言うのもある。

だが。気になっていたのはそれだけではない。




「何故、皆の記憶からリボーンに関する事柄が消えているくせに、俺は消えていない?」




コンビニに行ってジャンプを見てきたが、リボーンの文字は無い。

と、言うことはリボーンの漫画も無くなっていると見たほうが良いだろう。

何故、か。

指してリボーンに興味関心も無い俺が、何故。

熱狂的なファンが覚えている、というのはまだ解る。解るのだけれど、何故俺なのか。




「あー、もう。解らん。さっぱりだ。考えても答えが出ない時は寝るに限る」




よし、寝よう。情報が無ければ入るのを待つか情報収集。

俺は立ち上がり、符や筆を見つからないだろう所に片付けて、念のためにと呪いを掛ける。

後、は。

くるり、とドアを振り返ると、丁度。




『##NAME1##ー。地下室に呪い掛けて来たよー』




ドアをすり抜けてやってきたのは、人型の式神。

俺の代わりに地下室に呪いを掛けて来てもらって来たのだ。

姿が見えないよう術を施して。

俺だとまた何かあるかもしれないからな。




「有難う。じゃあ、戻ってくれるか?」

『了解!また何かあったら呼んでよ!』

「おう」




にっこりと笑って頷くと、式神は式文と同じように白い紙片に変わった。

それを見届けると、紙片を手に取り、机の中にしまう。

一息吐くと、俺は布団へともぐりこんだ。

あんなに色々な事があったのに、まだ一日目!




明日からの生活に、激しく不安に思いつつ、俺は暫しの休息に身を任した。











































ほんの一時の安らぎを
(願わくば、起きた瞬間今までの事が夢でありますように)(むしろ一時じゃなくてずっと安らぎを頂戴よ!)


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