TS長編部屋

□これは変化
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「ふぇっくしょん!!」


「おっさんか……」


雪降る中、盛大なくらいに響くくしゃみ。
ズズッ、と鼻をすする真っ黒い青年。大きな蒼い瞳は若干涙目になっていた。


「ファレルよりはマシだと自覚してるが?」


「んだと…リュウ、てめ喧嘩うっ……ふえっくしゅんっ!!!」


爆音と表現したほうが良いであろうくしゃみがこの場、スノーヒルに響く。

ファレルと呼ばれた青年は真紅の髪、瞳を持つグラディエイター。
ズビッと鼻を啜りリュウと呼ばれた真っ黒な青年を半目で睨む。

目線の先のリュウはほれ見ろと言わんばかりにニッコニコしている。


「そんな恰好してるからだよ?ホラ、ファレルの分のコートも持ってきたんだから……」

そういうと、何処からかベージュのふかふかなコートを取り出す。
リュウ自身も黒いロングコートを着用している。

対象にファレルは肩丸出し、ヘソ丸出しないつもの二次牛服。
付けている鎧は、今や寒さのため凶器だ。

「んなもん着たら、動きにくいだろ」

鼻を再び啜り、さっさとファレルは歩き出す。
ファレルは剣を主に使うため、前衛の位置で戦う。

一瞬の隙が命取りになるポジションのため、少しでも身を軽くしたいのだろう。

(そんな、身体冷えてるほうが動きにくいだろ……)

リュウがいくら言っても聞かないファレルがこれ以上冷えないようにと、ファレルのすぐ後ろで小さな術式を展開させた。
両手で包み込むような形の中心に黒い炎が発生する。

地獄の業火と異名を持つこの炎は、通常の炎より温度が高い。
普段はこのカバリア島にいるモンスターに向かい発動するための技なのだが、このように、目的と違う方向に役立つ時もある。

背中から感じる熱に気がついたファレルはリュウにばれないようにニヤけながら足を進めていた。
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