TS長編部屋
□これは衝撃
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「はい、リュウ。あーん?」
「ち、ちょっと!それくらい一人で出来るから!!」
壁も天井もベットも白で統一された部屋に、顔を真っ赤にしたリュウがいた。
先日、闇狩りという闇属性を扱う者を無差別に掠い、売り飛ばすという、カバリア島に起こっている問題の一つの被害にあった。
ファレルにより掠われることは無かったが、頭を強く打ち脳震盪を起こしていた為、すぐに病院へ連れていかれた。
一応入院はしているが、たいしたこと無かったので明日には退院出来ることになっている。
「照れなくてもいいのよ?」
クスリと笑い、紫の髪を揺らす女性。
綺麗に切り揃えられた前髪に、露出の多い服。
正直、目のやり場に困る。
その女性が今、病院食をいわゆる「あーん」で食べさせようとしてくる。
「もう、そんな歳じゃないし…」
真っ赤な顔は少しずつ治まり、小皿とスプーンを取り返す。
歳なんて、関係無いわよ?と言う言葉はとりあえず聞かなかったことにする。
「てか、キツル…なんでいるの?」
食事を終え、お茶を入れてくれた女性、キツルに尋ねる。
いつもだったら、ファレルがこういう役をしているはずなのに…
「ファレルに頼まれたからよ?彼、少し用事があるみたい」
「ふぅん……」
ズズッとお茶を飲み納得する。
「なぁに?私じゃ不満かしら?」
微笑みながらキツルは尋ねてくる。
「んや、アイツが珍しいなーって…」
リュウは首を横に振り、笑う。
ファレルは基本リュウにべったりで、離れることは少ない。
入院なんてしたら、かいがいしく世話を焼いてくると思っていたが、予想が外れ少し驚いていた。
「そう…もしかして寂しいのかしら?」
「まさか!口煩いのが居なくなって清々してるよ!」
これはきっと、リュウの精一杯の照れ隠し。
そう、と答えるがそのかわいらしさに笑いは止まらなかった。