TS長編部屋

□これは仲間
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「りゅーうー!」

明るい、男にしては高い声が響く。
声の主は青みが掛かった紫の髪を持つ少年。
走るのには適さない真っ黒でビラビラとした服であるが、凄い速度で声を掛けた相手の元へ駆け寄ってゆく。

リュウ、と呼ばれた真っ黒な青年は声の方へゆっくり振り返り、姿を確認するとこれまた凄い速度でかけていった。
同じように、走るのには適さない格好で。

そんな速度でお互い走るので、二人の距離はあっという間に縮まった。

「レウ!今日は狩り?」

元気いっぱいな少年、レウはいつも笑顔だ。
リュウにくっつき、質問に対して首を横に振った。
そして、何か言おうと口を開いたが、背後からの声でそれは遮られてしまった。

「おい!リュウ!離れるなと言っただろう!」

「レウ…あんまり動きまわるな」

片や紅。片や蒼。
お互い慌てて駆け寄ってきたのか息が弾んでいる。

「あ、ファレルさん!こんにちは!」

「シアル大丈夫?」

当の怒られている二人は話を逸らすかのようにお互いの後ろから来た付き人に話し掛ける。
しかし、ファレルと呼ばれた紅も、シアルと呼ばれた蒼もそのまま話に持ち込むことはしなかった。

「レウ…お前もシアルに心配かけんな」

「リュウ殿…ファレル殿の言うことは聞くもんだ」

お互いの付き人に怒られたが、当の二人は耳を塞ぎ明後日の方向を見やる。
小さくため息を付きシアルはレウの頭を軽く叩く。

「しかし、何してんだ?二人共」

ファレルが問い掛ける。
ここは湿度が高く、底無しの沼が多数あるスワンプ地域。
しかし、豊かな自然が多く空気が綺麗な場所でもある。

「この先でまた、闇狩りの被害にあった羊が発見されたらしい…んで今回、委員会が調査の為にレウを現場に呼んだんだ」

闇狩り…それは闇の力を扱う者が急激に減少した為、その力を使う者が高値で売買されるという違法の取引。
カバリア委員会という、この島の治安、行政機関が対応をしているが、未だ鎮まる気配は無い。

現在、闇の力を持つ者には護衛が最低1人は付くのが当たり前になっていた。
ファレルもシアルもその護衛の任を受け持っている。
と言っても、ファレルは好き好んでリュウにくっついているのだが……

「調査の為に委員会はレウを呼んだのかい?」

ひょこっと、茶色の髪に貴公子のような格好をした男性が現れる。
突然、現れたその人物に一同は盛大に肩を揺らしびっくりした。

「ラクフィ……いつから…」

「さっき、ね」

にへら、と相変わらず曖昧に終わらせる笑みで答えるラクフィ。
彼はファレルと違い、正式にリュウの護衛をしている。

「で、シアル。レウは委員会に呼ばれたのかな?」

先程の質問を再び問い掛けるラクフィ。
シアルも突然のラクフィの登場にポカーンとしていたが、すぐ気を取り直し、懐から小さな紙を取り出した。

「この通り、な」

それは委員会から送られてくる際に使われる特殊な加工を施されたハガキサイズの封筒だった。

普段はメモ機能というデータによる連絡が多いのだが、重要な連絡等の際はこのような封筒を使用することが多い。

その封筒を受け取り中身を見るとラクフィは納得したような、呆れたような…そんな顔をした。

「…ありがとう」

その変化には気がついていたが、あえてなにも言わずシアルは封筒を受け取った。

「んで、リュウ殿達もなぜここへ?」

シアルも二人がいることへ対しての質問をする。

「僕達は友達のクエ品を集めにきたんだ!」

明るく返答をしたリュウにそうか、と小さくシアルは笑った。
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