TS長編部屋

□これは決断
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――カツン、カツン。
渇いた足音が広い空間に響く。
その空間には、テーブルと少しの棚。そして、申し訳程度の観葉植物。

「やぁ、久しぶりだね。リュウ」

そう声を掛けた男性は黒い衣装に鷹をイメージした帽子を被っている。
帽子からはみ出た髪は、鮮やかなブラウン。

リュウと呼ばれた漆黒の青年は足を止め、男性へ顔を向ける。

「元気そうだね。トコロス」

トコロスと呼ばれた男性はにこりと綺麗に笑う。
そして、一枚の書類を棚から取り出し、机の上へ置く。

「で、今回のこれは何の集まりなんだ?」

リュウの後ろから真紅の青年が前へ出る。
トコロスはその姿を確認すると、やっぱりと小さく呟く。

「ファレルも久しぶり」

「あぁ。で、この集まりは?」

挨拶もそこそこに真紅の青年、ファレルは二人再び問う。

そんなファレルにトコロスは苦笑いを一つ零す。

「…闇属性を使う人が…後どれくらいいるのか確認しておきたくて、ね…」

頭をポリポリ掻きながら、ばつが悪そうに呟くトコロスにファレルは何かを考えるような動作をする。
暫く考え、ふと思い付いたかのようにトコロスへ顔を向ける。

「…ホールにいた…あれで全員か?」

ホールにいた人数はせいぜい100〜200程度だろう。
いくら元より数が少ないと言えど、それは異常なこと。

「…そうだよ。あれで全員だ」

「…闇狩りの影響にしては、早く無いか…?」

闇狩りの存在をリュウ達が知ったのは、ほんの一ヶ月程前。
その一ヶ月で闇属性を使う者がほぼ全滅に近くなることは、到底信じられなかった。
実質、闇属性を使う者だって無抵抗では無いはずなのだから、尚更だ。
ファレルが問うと、トコロスは目を閉じ小さく息をつく。

「それが、ワタシ達が打っている対策だ」

「あ?」
「え?」

ぽかんと口をあけ、聞き返す二人にトコロスは小さく笑う。
そして、側にある棚から青い液体の入った瓶を取り出し、二人の前へ置く。

「希望者にこれを配布している。勿論、無料でね」

「……これって」

「スキルマスターの導き…成る程」

青い液体は今自分が習得しているスキルを忘れることのできる特殊な物で、魔法型が使用することにより自分が使う属性をチェンジすることが出来る。
闇属性を扱う者が急激に減少したのも、この青い液体の力あってのことだろう。

「そして…コレ…」

悲しそうな表情をし、トコロスはその液体をリュウの目の前に置き、先程机の上に置いた一枚の紙をファレルに渡す。
俯いてしまったトコロスを不振に思いながら、ファレルは受け取った紙に目を落とす。
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