TS長編部屋
□これは変化
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薄い茶色の髪を揺らし歩く美女。
頭に乗っかっている黒いネコミミは可愛いというより、美しい。
その横を歩く金髪ネコミミの少女は幼さ故か、とてもかわいらしかった。
その少女の横を歩く少年。
髪をくるんくるんと跳ねさせ、歩く。カッコイイの形容詞よりは、可愛いの方が似合う少年。
しかし、不機嫌なのか彼は半目のでぶつぶつ言いながら歩いている。
「ライガ、何をぶつぶつ言ってるの?」
いい加減、呆れた様子で茶髪の女性が尋ねる。
「いや、なんでもー…」
プイッと顔を逸らすライガ。
その視線を不思議そうに追う金髪の少女。
「キャロル、ライガは何かを見てるんじゃないわよ?」
キャロルと呼ばれた少女は、ふーん、と言い茶髪の女性にくっつく。
「んで、何が不満なのかしら?」
キャロルの頭を撫でながら、女性は問う。
「スズ、分かってるくせに……」
ふて腐れたまま、ライガは呟く。
茶髪の女性、スズは悪戯に再び「何が?」と聞き、ニコリと妖艶に笑う。
絶対分かってる。と言う心の声がライガに響く。
「俺はアイツが得意じゃない!」
「だって、私達だけじゃ危ないんですもの」
畜生、やっぱりかとうなだれるライガ。
3人は今、カバリア島の中心都市であるメガロポリスにいる。
ここは、ほぼ全ての街に繋がるため常に人で溢れかえっている。そのため、露店、ギルド勧誘などが盛んに行われている。
露店が集中した区域を抜け、少し歩くと白い噴水の広場へと辿り着く。
その広場の一角にスズよりも深いブラウンの髪をした人物が立っている。
まるで、どこかの貴族のような姿をしたその人はこちらに気がつくと、綺麗な笑みを浮かべゆっくりと歩いてくる。
「やぁ、キャロル、スズ、ライガ」
「久しぶりね、ラクフィ」
スズの手の甲にラクフィはキスを落とすその姿は、まるでどこかの舞踏会のワンシーンのようだ。
「キャロルも、一次転職したんだね?とても似合っているよ」
キャロルにも同様にキスをする。
ありがとーと、頬をほんのり染めている様子は、ほんわりとした空気をかもち出す。
「ライガも少し大きくなったかい?」
前者二人に続き、ライガの手をとりキスをしようと顔を近づけた瞬間、その手は勢い良く弾かれる。
ラクフィは頭の上にクエスチョンマークを浮かべたように、くるんくるんの金髪を見る。
耳まで朱に染めたその姿にクスリと笑いながら。
「おっ……お前、馬鹿じゃねぇの!!!!」
「何がだい?」
悪びれる様子も無く、そう尋ねてくるラクフィにライガは腹立てた。
「こ、こここういうことをお男にするって……!!」
「ただの挨拶じゃないか?ねぇ、スズ?」
「そうね、ただの挨拶だわ」
ねー、と二人意気投合。
だからと言って、公衆の面前だとどうしても、羞恥が隠せない。
「とりあえず、移動しましょうか?ラクフィ、話しはそこでで良いかしら?」
うーっと唸ってるライガを尻目にキャロルの手を取り喫茶店のテントが集中している地域を指差す。
「うん。構わないよ」
今までの柔らかい雰囲気は消えた表情でラクフィは歩き出す。
三人もその後を続いた。