TS長編部屋
□これは決断
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―――俺は何を見た…?
短い金髪をくるんくるんと自由に跳ねさせた少年はただ、立ち尽くしていた。
(俺は…キャロルを探して…それで…)
嫌な汗が背に流れる。
金髪の少年、ライガの目線の先にはファレルよりも深い赤。
そして、探し人。
笑う少女は無垢そのもの。
傍らに立つ男性は無表情であるが、雰囲気は柔らかいもの。
その光景はほほえましいもの。
ほほえましいはずなのに、ライガはその光景が異様としか思えなかった。
ゆっくり、愛用の銃に手を添えながら後ろへ下がる。
出来るだけ気配を消し、気付かれないように…。
「あれー?」
「君誰ー?」
不意にかかる軽い声。
ライガは咄嗟に銃を抜き、構える。
しかし、構えた先には何も無い。
「物騒だねー」
「あぶなーい」
クスクスと辺りに声が響く。
その声に奥にいた二人が気付いたのが気配で分かる。
(やばっ…)
直ぐさま走り出し、その場を離れようとする。
「どこ行くのー?」
「聞いちゃった?」
クスクスと笑う声がどこまでも付いてくる。
その声は辺りに反響し、広範囲へ届く。
「ちっ…無駄によく響く…」
悪態を付き、足を止めず走っていたが、振り切れはしない。
追ってくる声は本当によく響く為、先程の二人への目印にもなってしまう。
(仕方ない…)
引き抜いた銃に弾を詰め、ライガは足を止める。
すっと目を閉じ腕をあげる。
「まさか、僕達を探してる?」
「見つけれるわけ無いのに!」
声は相変わらず反響し、響く。
しかし、その声がどこから発されているのかは、到底把握することは難しい。
声の主も、油断しているのかクスクスと笑っている。
「ホラホラどうしたの?」
「やっぱり無理なんだ?」
ライガは目を閉じ銃を構えたまま動かない。
そんな様子に声の主は気を良くしたのか、余裕の声音でライガを急かす。
しかし、ライガは動じること無く銃を発砲。
銃声が響き、何かが壊れる音がする。
「何処、狙ってるんだい?」
響く声。
しかし、先程と違い二つ目の声は響かない。
ニヤリと笑い、ライガはもう一発、発砲。
やはり何かが壊れる音がする。
そして、再び走り出す。
もう追ってくる気配も声も無い。
ライガはホッと一息付き、足を早める。
「成る程。お前か」
ぞくりとする程低い声。
そして、威圧。
「ッ…――!?」
目の前には深紅の男性。
その姿を確認した直後、ライガの意識は闇に沈んだ。