シフォンケーキ

□↑番外編
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「雨……か」
雨の日に番外編




ザー……ザー…

しんしんと降り続ける雨を見ながら滝はポツリと無意識に呟いた

滝は委員会の仕事を終え、帰宅すべく校舎を出たのだか、チラリと空を仰ぐとどんよりとした雲たちが顔を覗かせる
滝は自身の鞄の中をガサゴソと漁り、溜め息を一つ漏らすとクルッと踵をかえし、校舎の中へ戻って行った。







「?、滝さん……?」
「日吉か…雨宿りかい?」

踵を返した滝の行き先は家庭科室。滝は右端の椅子に悠々と腰掛け、雨の様子をじっと見ていた。

そんな滝の許へ来たのは日吉。彼は自主練の最中に雨に見まわれたらしく、髪や服が濡れていた。

「滝さんこそ、雨宿りでも?」

荷物を置き、髪を拭きながら言う日吉に滝は苦笑いで頷いた

「傘を忘れてしまったんだ…だからこうして、止むまで待ってる」
「?、濡れて無いんですね……」


自分のびしょ濡れの格好と比較するようにジトリと睨む日吉に滝は窓の外を眺めながら言う

「降りそうだったからね……雨」

「……」

日吉は雨粒の落ちる灰色の空を見るが、降りそうだったなんてわかるわけがない

「……雲が早い」

「……雲が、?」

そう言われれば早い気がする、日吉がまた空を見あげると滝がクスクスと笑った

「…何ですか」

「二回目」

「……は?」

訳がわからないと言う様子の日吉に滝は視線だけを向けた。

「此処から空を見た回数」

ニコッ、と微笑む滝とは反対に日吉の眉間には皺が寄る

「カウントしないで下さい」

「クスクス、ゴメンよ」

「……」

「あんまり見ない方が良いよ……雨の日の空は」

「?、何故……ですか」

「日吉はさ、自分の泣いた顔、誰かに見せたい?」

「いいえ」

心底嫌そうに言う日吉に滝はクスリと笑みを溢す

「それと同じさ……空も。泣きっ面なんて見せたいもんじゃあない」

「……」

滝の言葉に日吉は窓の近くまでいきキツイ睨みを効かせ、空を見上げる

「日吉…?」

「それじゃあ、見ていたら泣かなくなりますね……」

「……」

「人前で泣くのは……恥じだ」

「……手厳し」

「……」

滝はそう言い、日吉同様に空を見上げる……――――睨みはきかせないが……。


「あ、上がったね……雨」


二人の甲斐あってか、その数分後、空は泣く事を止めた。

そして晴れた。――――快晴だ

「通り雨のようでしたね」

「クスクス、やるねー」


「日吉、帰るの?」

バックを持ち、滝は日吉に問う

「雨の後のコートは使えないですから……」
「それじゃあ俺も帰るとするかな……――途中までどうだい?」

「構いませんよ」

「じゃ、行こうか」



雨上がり、心晴れ晴れ良い気持ち。

雨は自分の変わりに泣いてくれる――。だれかが言ったそんな言葉。一体君はどれだけの人のどれだけの涙を流したのだろうか……。
今のは一体…――誰の涙なのか

その人の涙は…止まったかい?


その人は今……――――。

「……笑っているかい?」

「…―滝さん?」

突然立ち止まった滝に日吉の足も止まる

「……――いや、何でもない」

そう笑った滝は空を見上げた











(――……っらあ!!)
(ねぇ日吉、)
(…はい?)
(宍戸だね)
(宍戸さんですね)
(ジローと岳人もいるね)
(ジローさんと向日さんも居ますね)
(……馬鹿だね)
(……馬鹿ですね)

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