シフォンケーキ
□秋
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「寒…」
秋
秋空は高く晴れ渡り、山間もみじが目に入る
リョーマは一人帰路をトボトボと歩いていた。
彼の服装はまだ夏服。学校指定半袖のシャツにズボンそして肩にはテニスバッグを背負い、右手にはファンタ
(失敗したかも…)
今日の最高気温は26度そこまで暑くもなく寒くもないが、ファンタを飲んでいるせいで体の芯から冷たくなっていくのがわかる
今年は例年になく猛暑が続き9月に入ったは良いもののその上旬こそキツかった
リョーマは残っていたファンタをグイッと一気に飲み干し、3mほど離れた公園のゴミ箱に投げ入れる
カランカランッ
空き缶は綺麗な放物線を描きその場所へと吸い込まれた
タタッ
その時誰かが自分の後ろを走り去っていった
(外さなくて良かった…)
その様子を見届けるとクイッと帽子のつばを下げ、また帰路を歩く
「あれ?、越前じゃねえか」
不意に掛けられた声に振り返ると、自分と同じ格好をした堀尾が立っていた
「なんだ、堀尾か」
「…なんだとはなんだなんだだとは」
「別に…」
「……。しっかしまた知り合いに会うなんてな〜」
堀尾は自分の他にも誰かに会ったらしい、その顔は何処か不思議そうにそして驚いたようだった
リョーマはその事にはあえて触れず
なんだかんだで一緒に帰る二人。道中少しの会話を挟んだものの、そのほとんどがテニスの話題だった
「…んでさ、全然上手くいかねーの…なんでかな〜?」
「…力入り過ぎてんじゃない?あんた結構入り込み過ぎるから」
テニスの技が中々うまくいかないという堀尾に少し肩の力抜いたら?と言うと納得したのか次こそ成功させて見せると意気揚々と語る。
その様子を見たリョーマは頑張れば?と一言を残した
「んじゃ、俺こっちだから」
「ん」
「またなー」
「じゃあね」
堀尾と別れると自分の横が少しさびしく感じた…様な気がする
「あれ?、リョーマ君?」
「ホントだ!、リョーマくーん」
不意に掛けられた声にまたも振り返ると驚いた顔をしたカツオとカチローの姿が
「今度はこの二人か…」
今日は知り合いに会う日なのだろうか…?そう思っている間に二人は見知ったリョーマに歩み寄る
「偶然だね!、どうしたの?こんなところで」
「それはこっちのセリフ…家反対じゃないの?あんた達」
「あぁ、僕たちも偶然会ったんだよ!!」
そこのお店で!と何故か目を輝かせるカチロー
何がそんなに面白いのか
「知り合いにこうも連続して会うなんてなんだか今日は不思議な日だね」
ああ、その事か
それにはリョーマも納得した様子で話を黙って聞いている
「そういえば僕も二人に会う前に堀尾君に会ったよ」
思い出したようにカツオが発したその言葉に今度はリョーマが驚いた様な顔をする
「…俺も今さっき会った所、」
「!!、へえ〜僕は買い物の前に学校の帰り道で会ったんだぁ」
「ふーん」
ん?
ちょっと待て
今の話からするとカツオは自分よりも前に堀尾に会っている…ではなぜ自分には会わずにこの場にいて、しかも先にカチローに会っているのか…?
その答えは直ぐに出た
「僕、急いでたから走って此処に来たんだ」
ま・さ・か!!
「……ねえ、もしかしてその途中に誰かとすれ違わなかった?」
「え?、いや…急いでたからあんまり覚えてないよ…でも、公園に誰か居たような…」
やはり自分の後ろを走って行ったのはカツオだったのか…!!
(本っ当に外さなくてよかった!!)
全然知らない奴ならまだしも、知りあいに…しかも毎日の様に顔を会わせるやつに失敗している所なんて見られたら…!!
リョーマは心の底からあの時の成功を安堵し、カツオに何でもない…と言っておく
「んじゃ、この辺で」
「うん、じゃあまたね」
「引きとめちゃってごめんね?」
「別に…」
二人と別れると家はもう見えてきた
(本当に今日は良く会うな…)
見上げると青々と広がる空
それは今使っている数学の教科書を連想させた。
(……ん?、待てよ…数学…!!)
『数学』という言葉に顔を青くさせるリョーマ、そして愛用の通学バッグを徐(おもむろ)にあけ覗き込む…
ガサゴソとあさって、あるものが無い事に気がついた。
「!、やっべ」
その呟きと同時に学校に向って一目散に駆けて行った
―――その頃堀尾――
モヤモヤ…
「何か忘れてる気がs……」
「ああ―――――!!!」
―――その頃二人――
「今日は本当に偶然だね…」
「ホントにね…あ!」
「え?…あ!」
なにかに気付いた4人は一目散にある目的に向かって駆けて行く
『学校に数学の課題忘れた――!!』
その後、偶然か…はたまた必然か、再び理不尽な形で出会う事になってしまった4人が仲良く揃って校舎から出てくる事になったのは言うまでもない
(帰りに何か食べない?…)
(お!、いいなそれ!!)
(やったぁ堀尾くんの奢り!!)
(…っはあ?!)
(まだまだだね)