シフォンケーキ
□日吉若のはっぴーばーすでー。
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キ―ンコーン。カーンコーン
放課後を告げるチャイムと共に生徒たちは荷物をまとめ、一人また一人と教室を後にしていった
それは『彼』日吉若も例外でなく、荷物を鞄に詰め足早に教室を去ろうとした…
(今日は部活は休みだから…本屋にでも寄るか…)
その時だった
「あ!、居たいた。日吉―――!!」
すたすた
「あ…ちょ、無視すんなよー」
すたすた
「ひーよーs「うっとおしい!!」…やっとこっち向いたね」
「勘弁してくれよ」
鳳、そう呼ばれた少年はニコニコと人懐っこい笑みを浮かべながら日吉の隣に並んだ
180cmを超す彼の身長では日吉は顔一つ分くらい違うので、少し睨みがちに
歩く足は止めず、視線だけを移し会話をする
「で、何の用だ?」
「あ、そうだった。日吉さ、今日誕生日だろ?」
「…ま、そういう事になってるらしいな」
「『らしい』って」
そっけなく興味なさげに呟かれた言葉に鳳は苦笑い
「でさでさ、これから日吉の『誕生日パーティー』開こうと思うんだ!!」
「は?」
今度こそ日吉はその足を止めた。
*
「で、結局ここか…」
はあ、とため息を吐く日吉に鳳はまたも苦笑いを浮かべた
あの後日吉は樺地も加わった高身長二人に半ば強制的に連行され、つれてこられた場所は部活の帰りによく行く行きつけの店
「と言うか、樺地は良かったのか?」
「許可は…もらって、ます」
「良く跡部さんが許したな…」
物珍しそうに言うと、頼んだ紅茶を一飲み
「んで、お前は宍戸さんの練習付き合わなくていいのかよ?」
「うん、この事言ったら早く日吉のとこ行けって逆に怒られちゃったよ」
あはは、と恥ずかしそうにけれども何処か誇らしそうに言った
そんな様子にふっと笑い紅茶をソーサーの上へと戻す。
「何はともあれ改めて、お誕生日おめでとう。日吉」
「おめでとう…ございます」
「…感謝はしておく」
「…素直に『ありがとう』っていえよ〜」
「ウザいぞ」
「酷っ!!」
「喧嘩は…駄目」
「「「…」」」
一瞬視線を交えると、どちらからでもなく少し笑った
「ふう、そうだね。今日はおめでたい日だし喧嘩はなし!」
「…そうだな」
「プレゼント…どうぞ」
樺地はいつもと変わらぬ声音で言った
「え…」
(プレゼント…?)
「あ!そうだよ!!樺地ナイス」
樺地の言葉はっとしたように、鞄をあさり出す鳳に日吉はただその様子を見つめているだけだった
「はい、これ俺と樺地からのプレゼント!!」
鞄から出てきたのは綺麗に包装された包み
その大きさからして丁度書籍などが入る大きさだ。
正直プレゼントをもらえるとは思ってなかったので、驚いてすぐには行動に出来なかったがゆっくりとその包みを受け取る
「ねえ、開けてみてよ!」
「あ、ああ」
早く早く、とせかす鳳とジッとこちらを優しく見つめている樺地
カサッ
「あ、これ」
「どう?驚いた!?」
包装されていたのはやはり本で『学校の七不思議〜総集編〜』と書かれていた
「俺の探してた物だ…何故これを?」
「凄いでしょ!俺と樺地とで日吉の友達とかに聞きまくったんだよ!!」
(コクリ…)
「…」
ぎゅっ
日吉は無意識にその本を握る力を強めていた
他人の誕生日位でこんなにはしゃいで
プレゼントも用意して
ホント、暇な奴ら
「鳳、樺地」
「「?」」
「ありがとう」
(偶にはこんなのも…いいかもな)