シフォンケーキ

□食い倒れ
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「へい、らっしゃい!!」




食い倒れ



「あ、9人です」

ここは大阪のとあるお店。
店の前にはお好み焼き、タコ焼き、焼き肉とまあ見ているだけで、お腹の虫が鳴りそうな看板が掲げられていた。丁度、そこに通りかかった学生達は看板を眺め、自身の財布の中身を見、値段を見、在る者はにらめっこを延々と繰り返し、在る者はほっと安心したように店へと足を進める。友と来たものは返すから貸してくれやら奢れやらなんとか店へ入ろうと試行錯誤(?)を繰り返す。

世の学生達の小遣いというのは思っているものよりか侘しいものだ。
もちろんそれに例外はある。
だが、例外中の例外だ。くれぐれもそれを肝に命じてもらいたい。黒カードを平気で出し、現金を持ち歩いた事無く、一円?何それおいしいの?…失礼。そんなことはまず、まず無いだろうがそんなことあったりしちゃうから世の中面白いものだ。話は逸れてしまったが、この大阪四天宝寺中テニス部メンバーはそんな数多の例外でない平凡財布学生の仲間である。

彼らは部活帰り、いつものルートでワイワイと賑やかに下校していた。そう、いつも通り
しかし、皮肉なことに今日に限って野生児の胃袋は限界に達していた。


「しーらーいーしー」

(始まった…)

部長である白石蔵ノ助はこのゴンタクレこと遠山金太郎のだす『声』を知っていた。それは雛鳥が親鳥に餌をねだるに酷似したそれ。
また、この声を出した後の金太郎は妙に粘る事も知っていた。

「腹減ったわ〜」

やはりと言うか、何というか…白石はまたかと言わんばかりいに大げさに息をはあっと吐き、肩を竦めながら言った

「あかんよ、金ちゃん」

「え〜!!ええやんか―――!!」

「あかんて、第一金ちゃんお金もっとるん?」

「ん〜…あ!あるで――」

思い出したようにほれ、と差し出された手にはかろうじて認識出来るぐっしゃぐしゃになった千円札が握られていた

「それ誰やねん」

2年の財前光のツッコミにごもっともと頷くメンバー達。

「誰って『野口さん』やろ?」

「それじゃ『野口さん』やのうて、『のぐちゃさん』やろ」

「おー光、今のオサムちゃんおったら絶対1コケシやったで」

「いらんすわ、そんなん」

見なおしたかのような忍足謙也の口ぶりに、うざったそうに視線をおくる

「どうすると?白石」

「金太郎はんはこうなると中々言うことを聞いてくれまへんからな」

金太郎の態度を見かね、千歳千里と石田銀が前にでる

「今日ぐらいはええんとちゃうか?」

「せやけど…」

「頑張ったご褒美っちゅーことで、丁度先週大会あったし今日は大目に見たってや」

副部長である小石川健二郎の言葉により、白石はしゃーないなと金太郎に向き直った

「今回だけやで?」

「ほんまか?!白石――――」

「ほんまほんま、健ちゃんのおかげやでまったく…お礼言い」

「おおきに!!健ちゃん」

「ええよ、ほな行こか」

「お―――」

二人の後に続き、ぞろぞろとメンバー達もお店へと入っていき冒頭となる。

各々がメニューを決定し、一番長く感じられる待ち時間になった
白石は千歳と健二郎の所へいきテーブルを囲うようにして腰を降ろした。

「よっ…こいしょっと」

「ははっ白石おじさんばいね」

「うっさいわ!…っちゅーかお前等金ちゃんに少し甘すぎるんとちゃうか?」

「そんなことなかとね、なあ?健二郎」

「せや、それに白石も金太郎には甘いとおもうで?」

「…そんなこと」

「即答せん所が何よりの証拠や」

「…はぁ。」

「白石幸せ逃げるとよ?」

「誰のせいやねん誰の」

ぐいっと白石が水を飲み干したところでお待ちかねの食べ物達が到着した

「お待たせいたしましたー」

「おー美味そうやな!!」


始めに来たのは、お好み焼き、もんじゃ…二種類だが数が多い。数えてみると1…2、34、5、6,7…あーはい。以上では無いんですが、育ち盛りの男子が9人も揃っているのだ、量や数はハンパなく多い。


ジュージューというとてつもなく美味しそうな匂いと音。それはまあ空腹の少年たちの喉を鳴らせるのには効果てき面。


30秒後

「なぁ―――…まだ?」

「焼き始めたばっかや」

「はーい」





2分後




「なぁ―――…まだ?」

「まだ、中が生焼けや」

「はーい」


白石の瞳が一瞬光った


「よっしゃええで―――!!」

「おし来いや!!」

白石は右手と左手にヘラを構え戦闘態勢。
即座に金太郎は口をあけた

「へい!!」

白石は掛け声と共に、右のヘラでお好み焼きの切り分けられた一切れを持ち上げ、左のヘラでそれを金太郎の口の中へと投げ入れる。

「…んー!!、美味い―――」

「ふっ…バイブルの実力なめたらあかんで?んんー!エクスタシー」

「おお、いつにも増しての無駄のない完璧な動き」

「流石蔵りん、日に日に進化しとるわロックオン」

「浮気か!死なすど?!」

「先輩らキモいっす」

わーぎゃーわーぎゃーと騒いでいる側で、傍観組はいつもの様に、隣のテーブルに座りその様子を眺めている

「金ちゃんは底なし胃袋ばい」

「謙也は金太郎はんに大食い勝負挑んどるし……」

「早食いとちゃうでー……あ、倒れた」

「謙也はペース配分わかってないと?」

「(合掌)」

「まったく、手が掛るな…」

しょうがないな、と小石川がお茶を一飲みしたところで金太郎が三人の所へやってきた

「ん?、どうしたんや」

白石はまだ焼いとる、かといって金ちゃんの皿の中が空になった訳でもない、では何だろう?千歳の頭は疑問符が浮かぶ

「早うせんと、お好み焼き全部食うてまうでー!」

ニカッと笑う金太郎に三人は一瞬驚いたがその後すぐに笑みをこぼした。

「せやな、どれ。腹も減ってきたことだし参戦すると?」

「わしも、そうしますかな」

「右に同じ」


食い倒れの街、大阪。
そこは笑顔があふれてて、暖かくて心地いい。美味しいご飯を友と共に。家族と共に。人々の笑顔と空腹の味方、食い倒れ大阪ここにあり!!



























(金ちゃんそこまだ焼けてへんて!!)
(んー美味い〜)
(すんませーん、白玉ぜんざい一つ)
(小春あーん)
(ひっつくなや!!一氏)
(謙也大丈夫か?)
(もう、食えません)
(合掌)
(どっかの2年とキャラ被ってるで)

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