短編
□遊園地
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恭平は今、スナコと一緒に遊園地に来ていた。
スナコともっと仲良くなりたい一心で誘いまくり、お化け屋敷に何回行ってもいいなら、という条件付きでokしてもらった。
まぁ単なるデートなのだが、相手がスナコとなるとちょっと違うようだ。
「次ジェットコースター乗ろうぜ!」
「望むところです」
(何で勝負みたいになってんだよっ…)
甘い雰囲気なんて全くなく、まるで何かの勝負をしているような雰囲気に恭平はイライラしていた。
(もっとこう、わぁ楽しそう♪とか、こわーい、とか、そういうのはコイツにはねーのか!)
「何してるんですか?行かないんですか?」
(コイツがそんなこと言うわけねーよな。でも、もっとこうデートらしい雰囲気になれる乗り物ねーかな。)
ブツブツ言いながら真剣に何かを考える恭平。それを横から眺めるスナコ。
(本当にキレイなお顔。この人が私のことを好きなんて、悪い冗談なんじゃないかしら?)
「あっ!!!」
突然大声を出し、ガバッとスナコの方を向いた恭平。
「ジェットコースターは止めだ!観覧車に乗るぞ!」
「えっ…観覧車ですか?」
急にスナコの表情が曇った。
「どうしたんだよ?」
「私、高いところ苦手…なんです。」
恭平はチャンスだと思った。
「大丈夫だよ。俺がいんだし。下見なけりゃ平気だよ」
「分かりました…」
恭平のいつになく優しい言葉に思わず了承してしまったスナコ。
(これでやっと二人きりでデートらしい雰囲気になれる…!)
恭平は心の中でガッツポーズをした。
(しかし、高いところが苦手なんて、こいつも可愛いとこあんじゃん)
「おい、大丈夫かよ?」
観覧車に乗ってから微動だにしないスナコ。
「だ、大丈夫です…」
何とかそう答えるスナコ。
(ん?)
膝の上でギュッと握りしめられた手が震えているのに気付いた恭平は、スナコが座っている方に行き、そっと抱きしめた。
「!!あ、あ、あのっ…」
急な恭平の行動にパニックになるスナコ
「こうしてれば、高いかどうかなんて分からなくなるだろ」
しばらく沈黙が続く―
それを破ったのは恭平だった。
「悪かったよ。」
「どうしてあなたが謝るんですか?」
「お前と…その…で、で、デートらしい雰囲気にしたくてさ…お前が怖がるなんて珍しいし、その、可愛いな、なんておもっちまって…でもまさか、こんなに怖がるなんて思ってなくて…だから、悪かったよ」
「次はこんな怖い思いさせねーから…だから、嫌いになるとか…無しな?」
「別にこんなことで嫌いになったりしませんよ。」
その言葉を聞いてホッとした恭平。
「でも、あなたがそんなに悪いと思っているなら、抹茶アイス買ってきてください。」
「えっ。」
「あと、イチゴアイスも。二人で一緒に食べましょう。」
その言葉を聞いて、スナコを抱く腕が強くなり、思いが強くなった恭平だった。
おわり