短編
□マッサージ
1ページ/2ページ
ある夜のスナコの自室―
「あ、そこ気持ちいいっ…」
「んっ、もっと強く深く…」
何とも悩ましげな声が聞こえていた。
だが、別にやましいことをしているわけではなく、恭平が日頃美味しいご飯を作ってくれているお礼にと、スナコにマッサージをしているだけ。
というのも、もうすぐお雛様。女の子のお祝いの日ということで、中原家唯一の女子であるスナコに、日頃の感謝を込めてそれぞれに何かしてあげようということになったのだ。
蘭丸、武長、雪の三人は、それぞれ、掃除・洗濯、洗い物・アイロン掛け、料理、と家事を分担してスナコに主婦業を1日お休みしてもらうことで、日頃のお礼を。
恭平は最後まで悩み、日頃の疲れを癒してやろう、ということで、マッサージになったのである。
「あなたが、こんなに上手だなんて思っても見ませんでした。」
「んぁっ。そこ気持ちぃい〜!」
スナコは恭平のマッサージに陶酔していた。
しかし、当の恭平本人は、先ほどからのスナコの悩ましげな声に、理性が吹っ飛びそうになっていた。
(こ、こいつ、こんなやらしい声出して俺のこと誘ってんのか?!)
(い、いや。こいつに限ってそれはねーよな。)
「あの、もうちょっと上の方押してもらってもいいですか?」
「え?あ、ぁあ。…この辺か?」
「あ〜、そこです…はぁっ、すごく気持ちいい…」
自分の彼女のこんな悩ましげな声を聞いて、我慢が続く訳はなく。
「もぅ我慢できねぇ!!」
「え?きゃっ。ちょ、ちょっと!どこ触って…!」
恭平は、スナコが自分と互角に戦えることを知っているため、両手を頭上で拘束し、抵抗できないようにしてしまう。
「あ、あの…」
スナコの目に恐怖の色が浮かんだのは気付いたが見ない振りをした。
「お前が、あんなヤらしい声だすのがわりぃんだぞ。好きな女のあんな声聞いて我慢できるわけねーだろ!」
その言葉を聞き、スナコの顔が真っ赤に染まった。
それを見て、細い糸でやっと繋がっていた理性は、いとも簡単に吹っ飛んだ。
「お前…かわいすぎんだよ…」
恭平の顔が近づき、スナコの唇にそっと口づけた。
(コイツの唇って、何回キスしても、柔らかくて…甘い…)
口付けは優しく、でも徐々に深く熱いものに変わっていく。
それは、まるでこれから行われる行為を物語っているようだった。
終わり