銀八×土@

□※後悔先に立たず。
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ある、晴れた日の事。涼やかな風が心地よく感じる・・・訳でもなかった。

「さっみぃ・・・」

やはりマフラーだけじゃダメだったか、と。


『後悔先に立たず。』

沖田と登校してきた土方は、教室に着くころには足が動かない状態で。

「立春なんてとんでもねーな・・・」
「ほんとですねィ。寒くてしょーがねーや寒さで凍え死ね土方。」
「え、最後何つった?なんかもの凄く不吉な言葉が聞こえたんだが・・・」
「気のせいですぜィ土方さん。ボケてきたんじゃないんですかィ?」
「まだそんな齢じゃねぇ!」

こういうのは日常。沖田はドSだ。しょうがない。まぁ、自分にしか言ってこないのは置いといて・・・。だが、真剣に悩んでいる時は真剣に相談に乗ってくれて。どこか優しいところがあるから土方は沖田の事が気に入っていた。今日は一段と酷い毒舌に微笑しながらも席に着く。自分の机の上に手を置くと、机も寒さに殺されていて。ブルっと身震いする。こんな日には、家に帰ってコタツに入りたくなる。それに、寒いと。

「ういー。寒ぃーなー。先生職員室行って暖房あたりたいから早く席に着けー。」

寒いと、銀八がくっついてきて。『だって土方くんあったかそおなんだもん。』とか言ってきて。男同士なのに。

「出席取るぞー。休んでるやつは手を挙げろー。」

「「「センセー。それめちゃくちゃ古いでーす」」」

「うるせー。何ぴったり息合ってんだよコノヤロー!」

ドッと笑いが広がる。

このクラスのいいところは、とても団結力が強いところだった。というか、息がめちゃくちゃ合っていて。思わず土方は吹きだしてしまった。銀八は、生徒の前や先生の前ではとても面白い、人気のある先生。『常識人』なのだが。・・・自分の前になると、時には甘えん坊、時にはサドになる。なんで自分なのだろう、と、いつも考える。別に他の生徒とあまり変わらないし、普通に勉強なども頑張っていて。他の生徒と違うところなどない。しいて言えば、自分の性格だった。

「あ、テスト返すの忘れるトコだったわ。やべー。またバカ皇子に怒られるトコだった。」
「・・・、あ。」

ふと、思い出した。今回の国語のテスト・・・あまり解けなかった。でも、それには理由があって。

「出席番号順に取りに来いー。あ、今回赤点だった奴は勉強教えてやるから来い。」

こういう所はきちんとしていて、生徒想いで。好きだった。

「・・・嘘だろ、過去最低じゃねーか・・・。」
「ん、土方さん勉強しなかったんですかィ。珍しい。」

沖田も珍しい、と驚いていた。自分でも驚いた。土方は、最近体調を崩していて。テストの前日、徹夜してしまった。いざ、テストとなると、頭がぼうっとして。問題もあまり頭に入らなかった。

「・・・土方、どうした。今回はあんま良くなかったみたいだけど。」
「いや、何でもないです・・・すみません。」

銀八には心配をかけたくなかった。銀八の事だ、とても心配するに違いはなかった。

「そうか?・・・ならいい。まぁ、勉強なら教えてやるから、今日国語準備室に来い。」
「ありがとうございます。・・・じゃあ、放課後に行かせてもらいます。」

この優しさに負けてしまったのがいけなかったのか。後悔先に立たず、だった。




―放課後。
寒さに耐えながらも、土方は国語準備室に向かっていた。部活は野球部に入っているが、顧問の近藤先生に理由を話したら、『頑張って来い。お前はやればできる奴だ!』と言われた。あの、父親のような優しい、時には厳しい近藤の事を尊敬していた。

コン、コン。
扉を叩くと、すぐに返事が返ってきて。

「入れ。」

遠慮なく扉を開けると、銀八は書類に向かって何かを書いていた。

「、よし。ちょうどいい時に来たな土方。ちょうど書類書き終わったとこだ。とりあえず、こっちへ来い。」
「・・・はい。」

何故だか光の加減で銀八の顔がとても綺麗に見えてしまって。不覚にもうるさく脈打つ。
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