銀×土@

□※拾い食いはやめましょう。
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「ん、土方さん、見るからに甘ったるそうな子袋が地面に転がってますぜィ。」
「あ?・・・んだ、コレ。」



╋拾い食いはやめましょう。



ある晴れた昼下がり。
2月22日、江戸は活気に包まれていた。

「ウルセー。おちおち昼寝もしてられねェや。とりあえず土方死ねよコノヤロー」
「知らねぇよ。つか普通にサボりたかった発言してんじゃねーよ。」

ピンクやら紫やらな空気な歌舞伎町でも、祭りという名のバカ騒ぎに巻き込まれていた。
そんな歌舞伎町の一角に、鬼の副長と呼ばれる男と、バーズカを左手に、頭の上の方にアイマスクをかけているサディスト皇子、もとい沖田が居た。

―平成22年2月22日。

そう、今年は『2』が5つ並んだと言うだけの日だが。祭り好きな江戸っ子達は、こんなおいしいネタを放っておくわけが無かった。
まだ朝の9時だと言うのに、屋台やら花火やらで賑わっていた。

「別に2が5つ並んだって何も変わりゃしねーのにな。これじゃあ逆に天人にお偉いさんを殺してくださいって言ってるようなモンじゃねぇか。」
「いやいや土方さん、俺にとっちゃあ有難いイベントですぜィ。特に今が絶好のチャンスなんでィ。」
「おいおいおいおいィィィ!なんでバズーカかまえてんだ!しかもなんで普通にバズーカ持ってんだァァァァァァ!」

土方の言う事は正しかった。こういう祭りやイベントなどには必ずと言っていいほど暗殺やテロが付きものだった。

ふいに、沖田が話題を出してきた。

「そういえば、こんな言い伝えもあるんですってねィ。」

―今日の夜、22時22分22秒に永遠の愛を誓った者たちは、永遠に結ばれる―。

「あ?何だそれ、22秒ってどんだけ細けぇんだ。どこの凡人が考えたんだよ・・・」
「それがどうも本当らしいですぜィ。何でも、江戸1番の有名な占い師が言ってたそうでィ。」
「誰だよ・・・、本当にそうならチャイナ娘とでもやってればいいだろ。」

ふと、チャイナ娘、と言うと、沖田は目を見開き真っ赤になりながら、とうとう俯いてしまった。

「あいつは、俺の事なんてどうも思っちゃいねェ・・・」
「・・・お前、まさか。」

本気なのか、と。そうだったら、少し悪かったかも知れない。
急に顔が上がったかと思うと、いつもの風貌に戻っていて。

「それより、アンタも早く旦那のトコに行かねェんですかィ。」

何を言い出すのかと思ったら、土方が最近気になっている銀髪侍で。

「はァ?!な、何であいつなんだよ!俺はわざわざ喧嘩売りになんざ行きたくねぇ。」
「何を今更照れてるんですかィ、気持ち悪ィ。」

こいつには何も言っていない筈、なのに。とっくに見透かされてたようだった。

「・・・っ、!」
「何真っ赤な顔してんでィ・・・気味悪ィや。っと、土方さん、見るからに甘ったるそう子袋が地面に転がってますぜィ。」
「・・・あ?・・・んだ、コレ。」

そう言って沖田が地面に向かって指差したその先には。

「「・・・、飴、?」」

言うが早いか、そこには飴玉が転がっていた。
ピンクで覆われたその容貌は、ハートの形になっており、2,3センチ程の飴がこれもまた透明に近いピンクの子袋に入っていた。

「どうせ屋台か何かの景品だろ。放っとけ。」
「土方さん、拾ったものは食べましょうって教わらなかったんですかィ?・・・これだから今時のゆとり教育は・・・」
「教わってねぇよ!っつかお前が間違ってるんだよ!誰に教わった!」
「まァまァ、つべこべ言わずに大人しく食べろや土方コノヤロー、ほい。」

怒鳴っていると、急に口に何かが放り込まれた。

「・・・ん、ふっ、・・・おい何物騒なモン食わせてんだァァァァ!何か変なモンだったらどうするんだよ!」

さっきの飴玉が放り込まれたらしい。子袋から飴玉を取り出す動作は瞬間と言っていい程で、もはや神技だった。
土方の気分とは裏腹に、放り込まれたモノはふわふわと甘く、それでいて色っぽい香をかもし出していた。苺のような痺れる味。食べていると、頭がピンクに染まりそうな味だった。

「甘っ、・・・捨ててもいいか。コレ。」
「捨てたら即バズーカ打ちのめしますぜィ」
「なんで飴玉ごときでバスーカ打たれなきゃならねぇんだ!」

捨てられそうになくて。
すぐに無くなるだろう、と、口の中でコロコロと転がしていた。

「・・あ、ドラマの再放送始まる。じゃあ、後は頼みましたぜィ土方さん。」
「あっ?って、おいィィィ!」

軽く小走りになりながら、少し振り向き『じゃっ☆』と言い去る姿は爽やか以外のなにものでもなくて。

「余計イラつくわボケェェェェェ!」
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