銀八×土@
□※後悔先に立たず。
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「?ほら、どうした。早く座れ。」
「・・・あ、はい・・・っ」
思わず銀八に見惚れてしまっていて。
自分が自分で情けないと思った。
銀八の隣の席に座った。のだが。
銀八が黒い笑みを浮かべていて。
「どこ、座ってんの。ここだろ?」
そう指差した場所は。
「ここって・・・っ」
銀八の足。というより、銀八は自分の上に乗れ、と言っていたらしい。
だが、高校生にもなって。しかももうすぐ自分は成人だ。
「どうした?・・・早く座れよ。勉強、教わりたいんだろ?」
来るんじゃなかった。銀八は、最初からこういう奴だった。後になって、改めて痛感した。
「・・・っ、いやです。俺は勉強教わりにきたんです!」
「じゃあ勉強教わりたくないわけ?」
「それは・・・教わりたい・・・ですけど。でも、人の上に乗るって子供じゃないんですから・・・っ。俺は普通に勉強を教わりに・・・」
銀八が面倒くさそうに溜め息をついて。
「えっ・・・?」
気付いた時には、銀八の上に乗せられながら座らされていて。屈辱だった。
「いやです!降ろしてくださっ・・・」
「だーめ。教えてあげるから。」
手足をジタバタとさせて逃げようとするが、腰をがっちりとホールドさせられていて。逃げようにも逃げられない状態だった。
「ほら、多串くんの為に問題作っといてあげたから。・・・1問目。」
もうここまできたら、素直に言う事を聞くしかなかった。自分でも、顔が赤くなっているのが分かるほど、顔が熱かった。
気付かないフリをしているかのように、スラスラと話を続けていく。
「・・・次の文は、あることわざの意味を表したものである。この意味に適したことわざを選びなさい。」
「・・・はい・・・。」
「人の意見や批評などを心にとめないで,聞き流すこと。・・・答えてみろ。」
全身全霊で、脳内を回転させた。これは確か、・・・高校入試の時にも出てきた問題だ。
「・・・馬耳東風・・・だと思います。」
「正解。次ね。」
たった1問正解しただけなのに、とてもホッとした。これからの銀八の行動を予想できるほど、土方は頭が回らなかった。
「三島由紀夫について。作品は?」
迷った。『砂の女』か、『仮面の告白』・・・だったはず。ここは、勘に頼るしかなかった。
「砂の女・・・ですか?」
「・・・不正解。答えは、仮面の告白・・・。」
やはり間違った。勘に頼ってはいけなかったのだ。
「はい、お仕置きね。」
「お仕置き・・・?ひぁっ!」
お仕置き、と言われ、急に首筋をねっとりを舐めあげられた。急な刺激に、ぞくぞくする。
「何っ・・・するんですか!」
「やっぱ間違えたらお仕置きってもんがあった方が、覚えられるでしょ。」
「何言って・・・っ!」
「次ー。」
勝手に話を進められてしまった。これから間違えたら毎回こんな事をされるのか、と思うと、恐怖さえ感じられた。
「昔の暦、当時の月の異名を全て答えろ。」
「えっ・・・と・・・。」
3問目にしての難問だった。暦は昔から苦手な問題の一つだった。記憶力の問題は昔からの天敵で。
「一月は?」
「睦月・・・です。」
「そ。じゃあ、二月は?」
「如月・・・だと思います。」
「せーかい。三月。」
「えっと・・・っ」
完璧に頭から抜けていて。
やばい。確実に今度間違ったら、さっきよりもひどい事をされるに違いない。
だが、どうしても分からなくて。
「・・・分かりません。」
「弥生。これ結構簡単だっただろ?」
言われてみると、そうか、と思った。でもそう思った時には遅くて。
「土方、こっち向いて。」
「・・・?」
怖くて、後ろを振り向けなかった。しばらく黙って俯いていると、顎を持ち上げられて、強引に顔を振り向かせられた。
「素直じゃないねぇ。」
「やめてください・・・」
「ねぇ、土方くんさ。」
「・・・せんせ、首痛いです・・・。」
「俺の事、好き?」
唐突な言葉に、正直戸惑った。いや、嫌いなわけでもないが、好きというわけでもない。教師としては尊敬はしている、が。
「嫌いでは・・・ないです・・・」
「そっか。」
まだ顎に手を添えられていて。いい加減首が限界だった。自分から手を払いのけようとすると。
「じゃあ、好きになれるって事だよね。」
「・・・え?」
一瞬の動作だった。
銀八の顔が急に近づいてきた。そう思うと。気付いた時には唇と唇が重なっていた。