僕らの約束

□第一章 思い出
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ジージー、ミンミンミィン・・・

普段はセミの声には耳を傾ける事はあまりないのだが、今日は何だか自然と耳を傾けてしまう。
何もす る こ と が な い か ら・・・いや、正しくは、宮沢栄汰(ミヤザワ エイタ)と名前だけ記入されたプリント集がでんっ!と置いてあるのが事実だが。

ふぅ・・・。
栄汰はため息をついた。
今年の夏休みは6年生にしては少なく、プリント集と、作文とコンクール用のイラストだけだからといって友達と遊びほうけていたため、何にも手を付けぬまま1週間もたってしまったのだ。
母には、プリント集なんてもう終わるって子も居るのよ!とこっぴどく叱られてしまい、だから今プリント集を前にしているのだ。

でもこの暑い中、しかもクーラーも何もない部屋で(母にクーラーのある部屋を追い出された)、勉強なんてウンザリだった。
栄汰は側にあった下敷きを引っ張りだすと、パタパタと扇いだ。
でもやっぱりむんむんした暑さは出て行こうとしない。

栄汰はきょろきょろ周りを見渡すと、部屋のすみっこに置いてあった扇風機の"強"のスイッチを入れた。すると、涼しい風が・・・と思いきや、風がこない。
ぱちぱちと何度も押してみるがやっぱり駄目。
コンセントがつながってないのかも・・・
栄汰はプラグがちゃんとさしこまれているか確認した。
「うげっ。マジかよ・・・」
扇風機のコンセントはちゃーんとつながっていた。
数年間使っているから壊れてしまったのだろう。
これでは使い物にはならない。

こんな所で勉強なんかできっかよ!
栄汰はすっかり机にうつ伏せになってうなだれてしまった。

そのとき。
トントントン。
窓を軽く叩く音が頭の近くで響く。
顔を上げ、カーテンを開けると栄汰の友達、横峰 健治(ヨコミネ ケンジ)の顔があった。
顔はにかっと笑っていてその手にはアイスが2本、にぎられていた。

栄汰は慌てて窓を開けると机に身を乗り出し顔を突き出した。
「やっぱりな!こんなことになってるだろうと思ったよ!アイス持ってきてやったから、来いよ。一緒に食べようぜ」
「うーん・・・でもなー・・・」
しばらく首をひねって考える。

「あっ良いことを思いついた!」
栄汰は顔を輝かせながら、健治にちょっと待てというと、暑いのも忘れて母のもとへかけていった。
 

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