D’sバレンタイン
□第4章 知らないよ
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時刻は、そろそろ5時30分になろうとしていた。
今日ばかりは積もる仕事も切り上げて、集まってきた人々。
かなりの人数だ。
一体どれだけの人がいるのだろうか…。
ふとそんなことを考えていると、すっかり忘れていたことを思い出した。
『あいつはどこに行ったんだろう。』
今日は起きてから厨房にこもりきりだったので、もちろん会うわけはないのだが、目的の人物は…。ホームにはいないだろう。
何となくそんな気がする。
「何ぼーっとしちゃって。まだ寝るのは早いわよぉ。」
いつの間に来たのだろうか。
隣にジェリーが立っていた。
「寝ないよ。」
赤毛はポツリとつぶやいた。
ジェリーは意外だった。
この隣に立つ赤毛が、もう少し反撃してくると思ったのだが…。
『この子も大人になったっていうことかしらねぇ。』
ふと思ってはみたが、そんな事はないということは痛い程分かっていた。
この子と初めて会った時から不思議な子だとは思っていたが、前よりも今のほうが余計分からない気がする。
「2人とも、そろそろドアを開ける準備したほうがいいわ。」
ぼーっとしていた2人に、リナリーが言った。
「そうか。そんな時間か…。じゃあ開けますか。」
そう言うと、すたすたとドアに向かう赤毛。
それに続いて、ドアに向かうジェリー。
そして少し離れたところで、リナリー
がカウントダウンを始めた。
それに倣って、ドアの前の2人もカウントする。
ドアの向こうで、今か今かと待っていたらしい人達も一緒にカウントする。
「10・9・8・7・6・5・4・3・2・1・0!!」
0を言い終えるのと同時に2人はドアを開けた。
外から人がわらわらと入って来た。
中でも一番先頭にいたらしい長身の男は、愛する妹を見つけて叫んだ。
「リナリーっ!!会いたかったよぉ。昨日も今日もほとんどこもりっきりだったから、寂しかったよぉ。」
なんて野郎だ。可哀相なリナリー。
これから始まるであろう面倒臭いことから逃げおおせるために、赤毛はその場を離れた。
「ちょっとリナリーを使いすぎだよ。ジェリー。」
「もう。兄さんったら、なんでそんなこと言うの?私がやりたいって言ったんだからいいでしょ。」
「でも、でも。」
「でもじゃないわ。兄さん。」
「ほんと、リナリーの言う通りよ。ただあんたが会えなかったからって、人に当たらないでよぉ。」
「何だ何だ!そんなこと言って。僕はただリナリーに会いたかっただけなのに!!」
コムイは叫んだ。
あーあ。ふてくされてしまったようだ。
しかし、愛しの妹はあきれて相手にしてくれない…。
「班長。ほらみんな見てますよ。落ち着いたほうがいいっスよ。
リナリーが作った料理、楽しみにしてたんですよね?このままじゃ追い出されちゃいますよ。さあ、おとなしく食べに行きますよ。」
遠巻きに見ていた金髪の男が叫んだ男を説得するために、近くに来ていた。
室長もあろう者がこんなんじゃ、その下で働いている人はどう思うだろうか…。
そんなことまで世話しなくてはいけないのか、班長は…。
「まったく…。リーバーがいなくなったらどうなっちゃうんだろうなぁ。」
だいぶ遠くのほうで騒ぎを見ていたラフェスは、思わずつぶやいた。