D’sバレンタイン
□第4章 知らないよ
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流石にこれが限界だろうというところまで食べ続けた。他の人用に、結構…。
いや、少しは残した。
隣でそばをすすっていた奴も、それ以外に食べる物がないらしい。
そばはすっかり無くなっていた。
「お前らどんだけ食ってんだよ。」
少年が話しかけてきた。
少年は赤毛のそばに椅子を持ち出して、食べ続けていた2人を見物していたらしい。
少年の皿には、お子様ランチのようにハンバーグやスパゲッティーがきれいに盛られていた。
少年が盛りつけたわけではないことはすぐに分かった。
「ティモシー!そんなとこにいたのね?」
すたすたと少年に近づいてきた人物。
「何だ。エミリアこそドコ行ってたんだよぉ。」
少年は人の心配など露知らず。
のんきにスパゲッティ―をすすっていた。
「ロン毛の兄ちゃん、そばしか食べれないのか?だっせぇ〜。」
近くに立っていた神田のほうを指差しながらティモシーは笑いながら言った。
でも、相手が悪い…。
「何だと餓鬼?」
冗談だというのにあいつは…。
鬼のような形相で少年を睨み付けている。
少年も悟ったらしい。
そのあとは無駄口をたたかずに食べていた。
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少し離れていたところに立っていたエミリアが、赤毛を手招きした。
「今日はありがとうございました。おかげでこれも作れたし…。」
エミリアは小さい袋をラフェスに見せながら言った。
「あっ…。でもお礼言っても訳が分からないわよね。」
ちょっと恥ずかしそうにしながら言った。
「いや。ちゃんと分かってる。でもお礼を言われるのは憑神のほうだよ。」
一瞬不思議そうな顔をしたが、エミリアは理解したようだ。
少し周りをきょろきょろした。
見えない相手を探しているらしい。
「憑神。」
少年に聞こえないぐらいの声で言った。
それはするするとこちらに近づいてきた。
『何ですかい?』
憑神は不思議そうな顔をした。
「エミリア。ここに憑神がいるよ。」
憑神のほうを指差しがら言った。
憑神も理解したらしく、ラフェスの方からエミリアの方へと向きを変えた。
「本当にありがとう。」
エミリアは小さくお辞儀をしながら言った。
「坊主も喜ぶだろうねぇ。」
少しからかうように言うと、エミリアはほんのり顔を赤らめた。
憑神と赤毛は満面の笑みを浮かべていた。