D’sバレンタイン
□第4章 知らないよ
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「あっ、ラフェス。独り言ですか。」
誰かに話しかけられたらしい。
後ろを見るとワゴンを押している少年が目に入った。
皿の数が多すぎて持ち切れなかったらしい。
「なんかワゴンが似合うな…。お前って。」
そう言いながらアレンのワゴンに乗っていたローストビーフの塊を取った。
「甘いものより、やっぱり肉だよなぁ。」
赤毛は幸せそうに肉にかぶりつく。
「あっ。勝手に食べたんですね。自分で取ればいいじゃないですか。」
普段ならもっと噛みついてくるだろうが、今日はさすがにこの量だ。少年は穏やかだった。
「分かったよ。自分で取りに行く。じゃあ。」
アレンと別れてさらに奥へと進んだ。
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さすがに人が多い進むのも一苦労だ。
やっと目的の場所につく。
肉が並んだテーブル。
そしてさっさと食べ始めた。
「よう。おはよーさ。」
声をかけられた。
「ああ。気付かなかった。」
肉に夢中だった赤毛は、隣に立つ赤毛に気付かなかった。
「なんか落ち込むさ…。ほんとついてないさぁ。今日は…。」
軽い気持ちで答えたつもりだったが、結構傷ついたようだった。
「なんかあった?」
「あー、聞いてくれる?それがさあ…。」
赤毛の少年はラフェスが『うん』と答える前に話を始めた。
確かに散々だ。
しかも誰もそのことを聞いてやらなかったらしい…。
「へえ。大変だったな、ラビ。」
「そうさあ…。ラフェスだけだよそう言ってくれんのわ…。」
相当弱っているらしい。
哀れに思えたので、肉を皿に取ってあげた。
「ほらこれでも食べて元気出しな。」
「ありがとうさぁ。」
少し元気になったらしいラビは黙々と肉を食べ始めていた。
それに倣って、ラフェスも負けじと食べた。