創作の箱
□『杜城と立花』
1ページ/10ページ
『杜城と立花』
「うーん。困った」
背の高い一人の子供が、立ち止まった先。
そこは何段も続く階段があり、その先に見えたのは一つの寺門。
それだけなら、何のためらいも無く、彼は入っていけるだろう。
しかし、彼は立ち止まったままだった。
「まさか、立花山寺とは」
そう、彼が困った理由とは、この先にある寺の事だ。
ここは、名の知れた寺であり、入る事が許されるのは力がある者のみ。
「お礼がしたいんだけどなぁ」
彼は栗毛の髪を揺らし、その門を見上げる。
自然の緑のような瞳がその門を恐々とみつめていた。
その名に恥じない大きな赤い鳥居、その奥には大きな木の板には『立花山寺』と書かれた墨の字。
それを守るように、二人の男性が鳥居左右に立っていた。
「どうしようかなぁ」
「わんっ」
隣で小さな子犬が尻尾を振りながら吠える。
男の子は、ふむと顎に手をあて、犬のほうを見やる。
白いような灰色のような、不思議な毛並みの犬を一撫でし、男の子は再び前を見た。
「まあ、土産を渡すだけだし……大丈夫だよね」