創作の箱

□『杜城と立花』
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『杜城と立花』



「うーん。困った」

 背の高い一人の子供が、立ち止まった先。
 そこは何段も続く階段があり、その先に見えたのは一つの寺門。
 それだけなら、何のためらいも無く、彼は入っていけるだろう。
 しかし、彼は立ち止まったままだった。

「まさか、立花山寺とは」

 そう、彼が困った理由とは、この先にある寺の事だ。
 ここは、名の知れた寺であり、入る事が許されるのは力がある者のみ。

「お礼がしたいんだけどなぁ」

 彼は栗毛の髪を揺らし、その門を見上げる。
 自然の緑のような瞳がその門を恐々とみつめていた。
 その名に恥じない大きな赤い鳥居、その奥には大きな木の板には『立花山寺』と書かれた墨の字。
 それを守るように、二人の男性が鳥居左右に立っていた。

「どうしようかなぁ」
「わんっ」

 隣で小さな子犬が尻尾を振りながら吠える。
 男の子は、ふむと顎に手をあて、犬のほうを見やる。
 白いような灰色のような、不思議な毛並みの犬を一撫でし、男の子は再び前を見た。

「まあ、土産を渡すだけだし……大丈夫だよね」


 
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