Office romance

□浮気しちゃうぞ
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酔った桜澤の腕を引きながら店を出た俺たち



付き合い長いがこんなに酔うコイツは珍しい



というか、あんなに絡むコイツは初めて見た



ったく…部長にまで絡みやがって…



頭を冷やして戻って来たら、甲斐、南雲、課長二人と次々絡むコイツを見て…なんだか妙にイラついた



なんなんだよお前は…



何がお前をそんなにさせたんだよ!







「…アイツとなんかあったのか?」



「ん?創?」



「アイツとなんかあったのかって聞いてんだよ!」



「ああ…彼女ね…今日はあの男のとこに行くってさ…泊まりで」



その状況を思い出し、ムウッと膨れる桜澤



なんだ、またそれか



まあ気持ちはわかるが…下らねぇ…と溜め息を漏らす



「あ、創!今くだらないとか思ったでしょ!」



「ああ、思ったよ。彼女が仮面ライダーオーズの握手会に行くだけで焼き餅妬くなんてな」



「泊まりだよ?!」



安心しろ、オーズは寝込みを襲わない



でも…とまだ八つ当たりし足りないようだ



「ほら、帰るぞ」



そう言うと、急に桜澤を引く手が振り払われる



「…どうした?」



「…帰りたくない…」



「どうして…」



「どうしても!!」



急に怒気を強めて付き放そうとする桜澤だが…俺は怯まず奴の腕を掴む



「放せ!」



「放さねぇ!」



「なんで…」



「そんな顔してるテメーを放っておけるわけねーだろ!!バカ!!」



「…創…」



「ったく…ほら、言えよ…俺とお前の仲だろ?」



「………」



立ち尽くす桜澤…掴んだ手をそっと放した瞬間、逆に桜澤が俺の手を掴んだ



そして指を絡ませ…何故か恋人握りに



キュッ…と繋ぐ手に力が入る



「……時折…彼女の瞳から僕が消えている気がする…」



「は?」



「やっぱり…誰も『僕』を見てくれないって…」



「………」



「この世界のどこにも僕の居場所なんかないんじゃないかって気がして…」



綺麗な顔が哀しみに歪む…
あの女…コイツにこんな顔させやがって…



「……バーカ」



その言葉にキッと俺を睨み、口答えしようとする矢先に俺が口を開く



「あるだろ、ココに」






―グイッ





繋いだ手を引き…俺の胸に包み込む…



ちょっと大きめの身体を力一杯抱き締めてやる



「は…創?!痛いよ…」



耐えろ。……あのな、お前は俺が見てやるし、俺んとこがお前の居場所にしてやる…だから…」



腕の力を緩め…そっと桜澤の髪に触れ…



その柔らかな髪の中で指を滑らせ…



俺の方へと顔を持ち上げる



「あんな奴のこと忘れて…俺にしろよ…」



「……創……」















瞼が落ちるのを合図に…ゆっくりと顔が近付く…



重なる吐息…



そして…柔らかな感触…



ほんの数秒重ね合った口唇は…その温もりを再確認するかのように再び重なりあう



2つの口唇は互いを強く求め合い…



全てを知り尽くすかのように深く貪り尽くす…



何度も…何度も…












「……創」



キスの終焉は桜澤の言葉だった



「…お願い…今夜はずっと一緒にいさせて…///」



勿論、そんな言葉を鼻で笑ってやった



「フンッ…今夜だけなんて言わせねーよ」



そう強気に言ったけど…目が覚めたらアイツの元に戻るかもしれない






…だが…






―覚悟を決めるのは…俺か…お前か…






ゆっくりと…二人の夜が更けていくのだった…








-fin-
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