08/15の日記

09:54
月の女神が継承式編、デイモンに会ったら
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※このお話は、月の女神本作とは全く関係ありませんのでご注意ください※
※この話では、ルーナはジョットたちとの別れを克服しています※
※継承式編のお話です※





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ぴよぴよぴよ、と小さな小鳥の囀ずりがよく聞こえる静かなこの広場に
………美しい銀髪を靡かせる女性がいた。
さらりと流れる髪は、まるで羽でできているかのように淡く美しく、
女性は暖かな笑みを浮かべて小鳥と戯れていた。

彼女の名前はルーナ。

自然に愛されし女神……月の女神ルーナだ。


「……え?シルフ……?」


ふわりと優しく吹く風に、ルーナはそう呟いた。

聞こえてくるいくつもの声を聞いて、ルーナは顔を強張らせた。
銀褐色の綺麗な瞳が、驚きで見開かれる。


「うそ…。ジョットの創ったボンゴレファミリーが……コザァートの創ったシモンファミリーと…?」


パッと思わず口を抑えて、ルーナは後ずさった。

信じたくなかった。
仲がよかった二人の子孫である人たちが……戦っているなんて…。


『ありがとうルーナ…。じゃあ、俺のボンゴレを見守り続けていてくれ』

『周りよりもたまには自分を優先しろよ。つっても、危険に飛び込むのはやめろよルーナ?』

『困った時はお互い様。ルーナ、仲間に相談することも大切でござるよ』

『光を持ち続ければ希望になる。ルーナ、究極に忘れるなよ!』

『逃げたくなったら逃げればいいんだものね。ルーナは真っ直ぐすぎて危ないし』

『自分から死ににいくようなことしないでよ。自分を大切にして、ルーナ』

『ヌフフ…。何百年時が経とうとも忘れないでください。私もルーナを忘れませんから』


脳裏に浮かぶかつての仲間。

私は、ぐ…っと拳を握り締めて木の側に置いてあったブーツを履いた。
昔、裸足じゃ危ないと言われて、ジョットからもらった思い出の品だ。
白いブーツが温かい気がして、私は言い知れぬ安心感を抱く。


「……行かなきゃ」


強き意思を灯しながら木々の間をくぐり抜け、私は森に外へと出してもらった。
……コザァートに教えてもらったあの島の森へと…。

………ジョット……コザァート…。













…………ザアアァァァ、と水打つ音が聞こえてきて私は目を開いた。

目の前に広がる景色は、私がいた森ではない森の景色で、そよ…と流れる風が、
ここがシモン=コザァート、シモンファミリーの聖地だと教えてくれた。
きょろ…と辺りを見回して、どちらへ行けばいいかを考える。


「……どうしよう…」


もう何年もここには来てないから、風景が少し変わってしまっている。
ジョットたちの子孫がいる場所も見当が付けられないし、がむしゃらに探し続けるのも無謀としか言えない。

誰かに聞けば分かるかな…。


「あの……誰かいない…?いたら返事をして…」


願うように言葉を紡いだルーナ。

自然に愛されし女神だからこそ、言葉が聞ける。
言葉が聞けるから……問いかける。
…そしてしばらくして……、木が月の女神の呼びかけに応えた。


〈滝……滝の方へ向かえ。月の女神よ〉

〈女神が探しておられる者たちはそこにいる〉

〈進め、女神よ。滝はすぐそこだ〉


年老いた嗄れた声に、私はぱあっと顔を輝かせた。

何年何十年と長い年月を生きてきた大木は、意思を持つ。
そんな大木たちに、ルーナはぺこりと頭を下げた。


「ありがとう!」


たっ、と水の音がする方へと私は走り出した。

もしかしたら危険な状況になっているかもしれない。
助けないと…!

その思いばかりが強すぎて、私はすっかり周りをちゃんと見るのを忘れていた。
横にざざっと避けてくれる茂みの中を走り抜け、私は前へと飛び出した。
地面に足がつく感覚が消え、代わりに浮遊感が体全体を襲う。

Gに何回も何回も言われていたことを、今更になって私は思い出した。


『お前なぁ……ちょっとは気を付けて走れ!また湖に落ちやがって!』


………あ、れ…?

体のバランスが崩れて、ふわっと下へと落ちていく。
ひゅーと風の音が耳元でして、
私はぎゅ…と目を固く瞑った。


「Σひ、人が降ってきたぁー!!?」


人の声といくつもある気配に私は安堵する。

よかった、ここであってた。
さてと…、なんとか着地しないと……。


「……助けて」


小さく呟いた声は風で掻き消されたけど、
しっかりそれは届いたみたいで、下にある池の水がザアッと動いた。
大量の水が優しく傷付けないように私を包み込み、そっと地に下ろしてくれた。

じゃり…と小石がこすれあう音をさせながら、私は振り返って水を見る。


「ありがとう」


すると、水はザアァァッとあるべき状態となり、元に戻った。
それを見届けて、私は辺りを見る。

鎖に繋がれた女の子と復讐者、血まみれで倒れた男の人、それから………。


「……ジョ――――」

「ルーナ……?」


ポツリと聞こえた懐かしい声に私は、え…?と声を漏らした。

私が見つけるより先に、名前を呟いたその人は私を抱き締めてきた。
ぎゅう…と強く抱き締めてくるそれから懐かしい香りが漂い、私はそう…っと上を見る。

忘れるはずがない……。
でも……でも彼は…死んだ、はず……。


「ルーナ…!やはり貴女だったんですね…!あぁ…ルーナ…。会いたかった……会いたかったですよルーナ…。
この何百年という時、どれだけ会いたかったことか…。私の愛しき女神」


目の前にあるブルーの瞳に、優しい水を思わせる色合いをした蒼い髪……。

間違えるわけがなかった。
目の前にいる人は……私の大切な人の内の一人…。

そん、な……。


「デ、イ…モン……?うそ……本当に…?」

「えぇ、私です。紛れもないD・スペードですよ。
ルーナ…、ルーナ……。一日たりとて忘れはしませんでした……」

「……なんで…だってデイモンは死んだ…」

「ですが私はここに在る。細かいことは……いいじゃないですか」


ねぇ?と言いながら笑うデイモンに、いつまで経っても変わらないと思う反面………私は疑問だった。

死んだ人間はもう存在できないのが当たり前であって決まりなのに………なんでデイモンがここに存在を…?


「ところで、なぜここにいるのですかルーナ?
貴女は厳重な保護の下、あの森にずっといると思っていたのですが」


やっと私を放してくれたデイモンから少し離れ、私は頷いた。

そうだ……危うく、来た目的を忘れてしまうところだった。


「ジョットとシモンの子孫が争ってるって、シルフから聞いて来たの」


ここに住むシルフから、今も流れるように事情を説明されてるけど…。
そう答えるなり、デイモンの顔が僅かに歪んだ。

失態を犯した、そう目が言っていた。


「……そうでした。風の妖精シルフは、ルーナが外の状況を知る一つの手段でしたね。
ヌフフフ…なるほど……」


デイモンは、ヌフフフ……ヌフフ……、と笑った。
何かを企むような笑い方に、私は少しだけ後ずさる。


「そう怖がらないでくださいルーナ。
あぁ…そうだ。ルーナ、貴女に一つ聞きたいことがある。ルーナなら知っていますよね?」

「な、にを……」

「シモン=コザァートの死の偽造について、ですよ」

「!、そうだ…!あの人、過去の記憶にいた人だ…!」

「で、ですが十代目…!その記憶はもう何百年も前の物です…!何百年前の人間が生きてるわけ―――」

「愚かな!それは女神に対する侮辱ですよ獄寺隼人。ルーナは月の女神。ボンゴレの女神だ」


デイモンがそう言った途端に、……ジョットたちに似ているボンゴレは驚愕の表情をした。
理の一角を担うアルコバレーノが、なるほどな…と呟く。


「ボンゴレの歴史に度々登場する女神ってのは、お前ぇだったのか……。初代ボンゴレファミリーが溺愛し、大切に守ってきた月の女神。
ボンゴレから姿を消した後でも、時折現れてはピンチを救う。……お伽噺だと伝えられていたが、まさか本当とはな」

「とりあえず、話を戻しますよ。
ルーナ、シモン=コザァートはあの後どこで何をしていたんですか?この私ですら今まで知らなかった。全くです」


話しなさい、そう言われ、私は目を一瞬だけ反らした。

今言っても何も問題にはならない。
ならば本当のことを言おう。


「……コザァートは………あれからずっとユウリュ森で暮らしてた」

「ユウリュ森…?バカな!
そんなイタリアからそう遠く離れていない場所でずっと暮らしていただと!?本当なんですか!?」

「ユウリュ森…?」

「今もその森はあるぞ。そう広くはないが、周りには畑があって遊牧されている動物がよく出入りする森だ」

「……ユウリュ森は、ホーンド・キングがいる森。
たとえデイモンでも、そう安々とは入れない。……だからコザァートはずっとユウリュ森にいた」


ホーンド・キングは私と同じ神。
動物の頭を持ち、体は人間という姿をする。

森を守る、人を守るための神とまで謂われるホーンド・キングなら、
きっとコザァートを受け入れてくれると思って、ホーンド・キングに相談した。

相談したら二つ返事でオーケーをしてくれて、それからコザァートはユウリュ森の中で人生を送った。
森と森なら、私の森から直接移動することができるからこまめに会いに行くこともしていた。

……デイモンに気付かれないように。


「……まさか…ルーナがその場所を提供したんですか!?
しかしユウリュ森は一般人でも入れる…。それでも情報がないのはおかしい…」

「言ったでしょうデイモン?ホーンド・キングは人を守る神。
……神の加護がコザァートには与えられた」

「ッ思わぬところでそんな誤算があるとは…!
………まぁいい。過去の誤算など、今現在には影響しない」


チャ…、とステッキを構え怪しく笑うデイモンに寒気を感じ、私は反射的に後ろに後ずさった。

………玄武を連れてくるべきだったろうか…。
今デイモンと戦闘になったら私は………何もできない…。
できるはずがない……!


「デイモン…おかしいよ……。ずっと前から思ってた…。
何でコザァートを殺そうとして………こんなことをしたの…!?
あの女の子だって、貴方がマインドコントロールをしたんでしょう!?」

「ヌフフ…、さすがルーナ。私を軽蔑しますか?」


ふ…っと悲しげに微笑むデイモンに、私は目を震わせる。
昔にも時折見せていたその表情。

ずるい……。
私が軽蔑できないのを知ってて……。


「ヌフフフ、昔から変わりませんね。
お人好しなところも甘いところも純粋すぎるところも………まったく変わらない…」


すぅ…と頬を突然撫でられ、思わずびくりと肩を震わせた。
それにデイモンはまた笑う。


「……デイモン………貴方は…ボンゴレに執着しすぎてる…」

「ボンゴレを強くすることが私の望み。最強のままで在り続けさせることが私の役目です。
………おや…ルーナ…?何をしているのです?…そこを退きなさい!」


私を押し退けて、その後ろにあったものを見て目を見開かせるデイモン。
そこにあったのは、傷全てが元通りになった水野薫の姿だった。

……バレちゃった。


「ッルーナ…!」

「……私がどんな性格か知ってるでしょう?」

「……貴女に治癒能力はなかったはず………そうか…“妖精の恵み”…!」


“妖精の恵み”

私が、近くを飛んでいた妖精に彼の怪我を治してもらったのだ。
妖精一人一人の恵みは小さいが、数が集まれば大きくなる。

故に、大きな怪我も治せるのだ。


「デイモン……。もうやめて…終わりにしましょう…?」

「終わり…?終わりにするものか!!ルーナは分かっていない…!
T世と同じ危険思想を持つ輩は消さなければならない。でなければ―――」

「分かっていないのはデイモンよ…!!ボンゴレを創ったのはジョットなの…。
なら、ジョットの思いを継げる者がボンゴレを継ぐのに一番ふさわしい…。貴方は自分の理想を押し付けてるだけにすぎない…!!」


そう叫べば、デイモンは信じられないというように怒りの表情を浮かべた。

キツく睨んでくるデイモンを、私は真っ直ぐに見据える。
もうやめて…、そう思いを込めるが、デイモンはばっと顔を反らして身を翻した。


「……行きますよ、クローム」

「はい…」


サアァァァと霧となって消えていく二人。
跡形も消えてなくなり、私はデイモンがいた場所をずっと見ていた。
どさっと膝をつき、私はポタポタと滴を落とす。

何で……何でなの…?
昔は…みんなで笑いあって……楽しく…してたのに……。

いつからこんなにおかしくなったの…?


「デイモン…!」


教えてジョット……。
私は…どうしたらいいの……?

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=あとがき=

唐突に書きたくなって書いてみました!
なんか…、ふと継承式編でルーナがいたらどうなるんだろうと思い…。

捏造で、デイモンはルーナの絶対的な安全を確保するために
ボンゴレを最強にしてきたっていう設定を頭の中で組み立ててみたり...
だから、ルーナに最後ああ言われてショック?を受けたデイモン、みたいな…←

とりあえず、今回はこの辺で…。
では!

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