09/04の日記

15:07
『堕ちた天使』第一堕 甘い香りの先
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※時代は初代ファミリー※
※デイモン落ち。シリアス、甘?※
※ヒロインは天使だが、掟を破り地上に堕とされた設定※



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暗くなりかけた夕方……、
裏路地で麻薬取り引きしていたやつらを片付けて、私は一息ついた。

まったく……他がみんな任務だからって、
今日は休みだったはずの私を使わなくともいいでしょう。
こんな雑魚共なら尚更です。


「さっさと帰りましょうか……」


踵を返し、最早歩き慣れてしまった裏路地を歩いていき、ボンゴレ本部を目指す。
コツ…コツ…、と靴の音だけが裏路地に響く中…………
バサ…ッと鳥が翼を動かすような音が小さく聞こえてきた。

ただの鳥であるなら気にも止めませんでしたが……なぜでしょうか…。


「何やら甘い香りがしますね…」


ヌフフフ……見に行ってみましょうか…。

ただの好奇心でその甘い香りを頼りに、その方向へと向かう。
何かがある所に近付けば近付くほど、ふわりと漂う甘い香りが鮮明になってくる。

ふわ…、と白く美しい羽が甘い香りに運ばれるようにして宙を舞っており、
私はそれに誘われるままそこへ行った。
ふわり、ふわり、と舞う羽がぽとりと地に落ち、私は足を止める。
そこに存在しているものに、私は目を奪われた。

暗がりでもはっきりと見える、妖しく相手を挑発するように美しい、
アメジスト色の透き通った髪に、白く汚れを知らないような肌に引き立つ桃色の唇、
それから意思の強い光を灯す金色の瞳……。
そして……………背中から生える白き翼が、その女性の人間離れした容姿を
更に人間離れに……神秘的にさせていた。


「……天使…?」


ポツリ、と呟くと、私がいたことに気付いた天使がこちらを向いた。

やはり美しい……。
私は神を信じない主義なのだが…、まさかこの目で天使を見るとは………ヌフフフ……。
欲しい…。
あの娘……あの天使が………。


「こんばんは…。こんな所で何をしているんですか?天使さん」

「……天使?そう見える?」

「えぇ。その白い翼が特に」


そう言いながら微笑めば、その天使は自嘲気味に笑った。
その笑い方も美しく艶かしい。

天使とは人の心を惹き付けるのだろうか…。

それから、天使は自身の胸元を晒し、痛々しい焼き印を私に見せつけた。
禍々しい逆さ十字に茨が絡んでいるその紋章は、今までに見たことがないものだった。


「私は堕天使……。
堕天の烙印を押され、ここに堕とされたの。貴方、人間?」

「はい。私は、D・スペードと言います。貴女は?」

「私…は……メリエル。メリエル=シ=レイデル=クォーツ」

「ほぉ…。メリエルですか。いい名前ですね。
堕天ということは何かしたんですか?」


静かに聞けば、メリエルはムッと顔をしかめさせた。

う〜ん、どうやら気分を害してしまったようですね。


「いろいろ…ね。掟を破っちゃったのよ。
バカみたいにたくさんある掟なんて、いちいち覚えられるわけがないのに」


やんなっちゃう、と愚痴をこぼすメリエル。
私は、ヌフフ…、と小さく笑った。


「大変そうですね。天使の世界とやらは」

「大変よ。人間も大変だって聞くけどね。同僚が言ってたわ。
人間って不便だから絶対に人間になりたくない、って」

「ヌフフフ……不便、ですか。
私たち人間からしたらこれが当たり前なので、そういうのはあまり…ね」

「そうなの?翼がないと不便なことばかりなのに。変わった生き物ね」


変なの、というようにメリエルはふふっと笑う。
それにつられて、私も自然と笑ってしまった。
イメージしていた天使とは程遠いところが面白い…。

逃すには惜しすぎる……。
堕天使なんて尚更…。


「それで?マフィアの人間が私に何の用?」

「おや?分かりましたか?」


マフィアなんて一言も言ってないのに、と言えばメリエルはハッと笑った。


「仮にも天使だった私を相手に、身分とか隠せないわよ。ぜーんぶ見えるもの」


そう言って、メリエルの手に現れたのは一つの虫眼鏡にも似た道具。
メリエルは、黒い取っ手に独特のデザインをしたレンズで私をレンズに越しに見た。

メリエルは、へぇー、と面白そうに呟く。


「術士なんて珍しいね。しかもボンゴレ所属だなんて……やだ、結構面倒な人間じゃない。
私ったら運無さすぎ。しかも野望が大きいわねー」

「……そんなことまで分かるんですか」

「分かるよー?今までの行いも全部」

「天使って卑怯だと私は初めて思いました」

「知ってる?このレンズ、呪いのレンズでもあるのよ?」


そう言ってメリエルはレンズにキスをしながら怪しく笑った。
それに不覚にもドキリとしてしまう。


「…天使が持つものなんですか?」

「さぁ?呪われた物を所持してるのは私ぐらいじゃない?」


メリエルはそう言って、ひもが通っていたレンズを首にかけ、髪の毛をばっと払う。

ひとつひとつの動作も美しい…。
どこか目をひくものがある。


「それじゃあ、私は行くわ」

「どこへ?」

「人間は知らなくていいの」

「堕とされた貴女に、帰る場所はあるんですか?」


金色の瞳が、何か嫌なものでも見るかのようにすぅ…と細められる。

メリエルは、羽ばたかせようとした羽をまた折り畳むと、私をその金色の瞳で睨み付けた。
人間にはない色合いがまた天使らしい、と一人感嘆してみる。


「………D・スペードとか言ったわよね?」

「ファーストネームでも構いませんよ」

「デイモン、貴方嫌な人間ね」

「周りからもよくそう言われます」


特に、アラウディ辺りなんかから……。
Gもありましたね。
ヌフフフフ………自分の性格は既に自覚済みですよ。
直そうとも思わない。

事実を言って、何が悪いと言うのです?


「天使にそんなこと言うやつなんて貴方ぐらいよ。帰る場所なんてあるわけないじゃない。
私の帰る場所は、天使界だった。そこから追放されたんだから、なくて当たり前」

「なら、私と共に来なさい」


帰る場所がないのなら、メリエルはどうしようもないはず。
こちらのお金を持っているようにも見えませんから、あとは野宿しかない。

天使も、野宿は嫌なものでしょうしね。


「………どういう意味?」

「そのままの意味ですよ。
私と共に来れば、衣食住を提供してやると言ってるんです」

「……へぇ?お言葉に甘えたいところだけど、何が目的?」

「ヌフフフ……。目的、ですか…。まぁ、言うなればそうですね……。
私のものになっていただきたい」

「…………私が貴方人間のものに?ふざけてるの?」

「天使相手にふざけるだなんてしませんよ。
私はただ……メリエル、君が欲しいだけだ…」


コツリ、と歩み寄り、
メリエルの綺麗なアメジスト色の髪を一束手に取り、そこに口付けをする。

さらりと流れる髪の手触りに、少しばかり驚いた。
まだもうしばらく触っていたい衝動に駆られるが、
メリエルに手を払われ、それはできなかった。


「拒否するわ。私、誰かの所有物になるのは嫌なの。私は私よ」

「それは残念ですね。ならば、見返りは求めないことにしましょう」


あっさりと諦めたのが意外だったのか、メリエルは訝しげな表情をして私を見た。

それに、私は偽りはないという意味を込めて微笑む。


「どうしましたか?」

「……本当なの?見返りを求めないなんて」

「本当です。
路頭に迷っている女性に、無理矢理見返りを求めるなんてできませんから」

「そういうところは紳士なのね。……あの嫌味のせいで好感はまだ持てそうにないけれど」

「ヌフフ…。気に障ったのなら謝りますよ」

「いいわ。ちょっと言ってみただけだから。
……とりあえず、お世話になるわね」

「えぇ。なら、こちらへどうぞ」


手を差し伸べれば、メリエルは私と差し出した手を交互に見た後、手をとった。
メリエルを案内しながら、
私はメリエルには見えないように、口元に薄く笑みを形作る。

住まわせてしまえば後はこちらのもの……。
マインドコントロールなりなんなりしてしまえば、メリエルは私に忠実な人形になる。
天使に効くかは分かりませんが、どうにかなるでしょう。

ヌフフフ……。
天使をものにしてしまえば、私の野望にまた一歩……近付くことができる。

有効活用させてもらいますよ。
堕ちた天使……メリエル。

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=あとがき=

とにかくデイモンのあの独特?な考え方を書きたかったっていうやつ。←
私はシリアスが一番書きやすいので、
デイモンのシリアスなんかいいんじゃないか、突発思い浮かんだら即文へ!←

とりあえず、この後はメリエルはデイモンと住んで、利用しようと考えていたデイモンだけど
少しずつ惹かれ始める……みたいにしていきたいなぁと思ってます。

最終的には恋に落ちるデイモンだけど、地上に堕とされたのはあくまで一週間の執行猶予のため。
一週間たったら天使界に戻り、
罰を受けないといけないのをデイモンにはずっと黙っていて、そのまま姿を消す。
姿を消したメリエルを探すデイモンの前に二日間程?消えていたメリエルが姿を現し、説明をする。
人間になって罪を償うことが罰となったが、
今までの記憶は消えてどこに飛ばされるか分からない。
そう告げたが、デイモンは上等だというように探し出すと約束する。
それで、探し出してもう一度新しく恋を初めてハッピーエンド?
的なストーリー設定です!

シリアス設定でデイモンって書きやすいなぁ…。
とりあえず、ここまで読んでくださりありがとうございました!
ではではまたの日に!

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